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社会

最強の恐竜が滅び「弱者」が生き残った理由とは?

稲垣栄洋(生物学者)

2019年04月03日 公開 2024年12月16日 更新

96パーセントもの種が絶滅した「地球史上最大の大量絶滅」

三度目が古生代ペルム紀末(2億5000万年前)である。この時期にはすでに、巨大な両生類や爬虫類が絶滅した。古生代ペルム紀末の大量絶滅は、驚くことに96パーセントもの種が死滅した、地球史上最大の大量絶滅だったと言われている。

古生代の海に出現した三葉虫は、オルドビス紀末の大量絶滅で壊滅的な打撃を受けたが、わずかな種が生き残った。やがてデボン紀後期の大量絶滅でも大打撃を受けたが、いくつかの種が生存を果たした。しかし、そんな三葉虫も三度目の大量絶滅であるペルム紀末を乗り越えることはできずに、ついに絶滅したと考えられている。

四度目の大量絶滅が、中生代三畳紀(2億5000万年から2億1000万年前)である。この時期には、巨大な超大陸パンゲアが分裂し、地中から大量に吐き出された二酸化炭素とメタンによって、気温の上昇と酸素濃度の著しい低下を引き起こした。

これにより、それまで活躍していた種の79パーセントが絶滅をしたとされている。そして、低酸素環境に対する適応能力を身につけた爬虫類が繁栄をし、恐竜へと進化を遂げていくのである。

そして五度目の大量絶滅が、恐竜を襲った白亜紀(1億4000万年から6500万年前)である。白亜紀末には、70パーセントもの種が滅んだと言われている。

 

そして、恐竜が滅んだ

どうしてあれだけ繁栄した恐竜が、滅び去ってしまったのだろうか。そのドラマは謎に満ちている。

恐竜絶滅の引き金となったのは、はるか宇宙からやってきた隕石が地球に衝突したことにあると言われている。

6550万年前のことである。

現在のメキシコのユカタン半島沖に隕石が衝突した。その衝撃はすさまじく、広い地域が火球に包まれたとされている。高熱で巻き上げられた岩石は、落下して地球のあちらこちらで大規模な森林火災を起こした。そして、灼熱の炎は多くの生物を焼き尽くしたのである。

この灼熱地獄を生き抜いても、安心はできない。巨大な隕石が落ちてできた巨大な穴に海水が流れ込む。やがて、猛烈な勢いで流れ込んだ海水は、穴がいっぱいになると今度はあふれ出して逆流した。そのあふれ出た海水が大地に向かってくる。大津波である。巨大津波は高さ100メートルを超えて内陸部へと襲い掛かり、地形によっては高さ200~300メートルに達することもあったと言われている。この津波は数日間にわたり、何度も襲ってきたと考えられている。

未曾有の大災害によって多くの恐竜が滅んでしまったことだろう。しかし、それだけではない。隕石の衝突によって巻き上げられた粉塵が地球全体を覆ってしまったのである。

太陽光は遮断され、地球の気候は寒冷化していった。

太陽の光が当たらない大地では、植物が枯れ果て、わずかに残った恐竜たちも飢えて死んでいったことだろう。

こうしてついに恐竜は地球から絶滅してしまったのである。

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絶滅を免れたのは「川」に棲んでいた生物だった?

著者紹介

稲垣栄洋(いながき・ひでひろ)

植物学者

1968年静岡県生まれ。静岡大学農学部教授。農学博士、植物学者。農林水産省、静岡県農林技術研究所等を経て現職。主な著書に『身近な雑草の愉快な生きかた』(ちくま文庫)、『植物の不思議な生き方』(朝日文庫)、『キャベツにだって花が咲く』(光文社新書)、『雑草は踏まれても諦めない』(中公新書ラクレ)、『散歩が楽しくなる雑草手帳』(東京書籍)、『弱者の戦略』(新潮選書)、『面白くて眠れなくなる植物学』『怖くて眠れなくなる植物学』(PHPエディターズ・グループ)など多数。

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