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社会

最強の恐竜が滅び「弱者」が生き残った理由とは?

稲垣栄洋(生物学者)

2019年04月03日 公開 2023年01月10日 更新

絶滅を免れたのは「川」に棲んでいた生物だった?

大繁栄していた恐竜のすべてを滅ぼしてしまうような大災害。

しかし、この過酷な環境を生き抜いた生物が存在した。彼らはどのようにして、この大災害を乗り越えたのだろうか。その原因もまたわかっていない。

しかし、生き抜いた生物たちには、共通点がある。それは、恐竜たちに虐げられ、限られた生息場所を棲みかとしていた敗者たちであったということである。

恐竜の時代、広大な大地と大海の多くは、さまざまな恐竜に支配されていた。そして、大型の恐竜が棲みかとしない「水辺」という生息地で暮らしていた生き物がいた。

爬虫類である。

陸上にはティラノサウルスのような巨大な肉食恐竜が多くいる。また、海にも巨大な肉食恐竜がいる。しかし、限られた生息地である川を棲みかとする恐竜は少なかった。そのため、爬虫類たちはそこを棲みかとし、巨大なワニのような大型の爬虫類も発達をしたのである。

 

「体温調節ができない」というデメリットがメリットに

どうして爬虫類は生き残ることができたのだろうか。爬虫類のすむ水辺は生命に必要な水がある。また、高熱を避けることができ、保温効果のある水は、「衝突の冬」と呼ばれる厳しい環境を乗り越えることにも役立ったかも知れない。

また、恐竜は体温を保つことができる恒温動物であるのに対して、爬虫類は体温を維持することができない変温動物という古いタイプであったことも幸いしたのかも知れない。

体温を保つためには、大量のエサを必要とする。しかし、ヘビやカメなどの爬虫類が冬眠をするように、変温動物である爬虫類は、気温が低くなると代謝活動が低下するのである。

鳥もまた、この大災害を乗り越えた。

鳥は恐竜から進化したとされている。しかし、大型の恐竜が大地を支配する中で、鳥となった恐竜は、他の恐竜の支配が及ばない空を自分たちの生息場所としていた。

そして、地上では弱者であった鳥たちは、穴の中や木の洞の中に巣を作っていた。こうした隠れ家を持っていたことから、災害を逃れることができたのではないかと考えられているのである。あるいは、翼を持つ鳥は遠くに移動することができることも功を奏した要因かも知れない。

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哺乳類が生き残れた理由は「小さかったから」

著者紹介

稲垣栄洋(いながき・ひでひろ)

植物学者

1968年静岡県生まれ。静岡大学農学部教授。農学博士、植物学者。農林水産省、静岡県農林技術研究所等を経て現職。主な著書に『身近な雑草の愉快な生きかた』(ちくま文庫)、『植物の不思議な生き方』(朝日文庫)、『キャベツにだって花が咲く』(光文社新書)、『雑草は踏まれても諦めない』(中公新書ラクレ)、『散歩が楽しくなる雑草手帳』(東京書籍)、『弱者の戦略』(新潮選書)、『面白くて眠れなくなる植物学』『怖くて眠れなくなる植物学』(PHPエディターズ・グループ)など多数。

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