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「“がん”になっても長生きする人」の食事と運動

大津秀一(早期緩和ケア大津秀一クリニック院長)

2019年04月27日 公開 2020年09月11日 更新

 

がんになっても「死なない食事」とは?

さらに2018年には、がんと食事に関しても注目すべき論文がアメリカから出てきました。がんと診断された1,191人を対象とした調査において、良質な食事を摂っている群とそうでない群と比較すると、がんによる死亡リスクが65%も低いという結果でした。

それでは、「良質な食事」とはどのような食事でしょうか。アメリカ農務省による「アメリカ人のための食事ガイドライン」によると、さきほどもご紹介した全粒穀物や野菜と果物に加えて、豆、乳製品、魚からのたんぱく質、植物性からのたんぱく質が含まれている食事です。

例えば、日本食ですと豆腐や納豆などが良いですね。魚は、身体に良い不飽和脂肪酸の供給源としても大切です。

一方で、精製穀物、塩分、糖類(砂糖や異性化糖、ブドウ糖、ハチミツなどに含まれる糖)は減らす方がいいとされています。特に、糖類ということでいうと、果糖・ぶどう糖・液糖が含まれるジュースは控えめにすることをお勧めします。

最近では、カロリーゼロのジュースもありますが、これは腸内細菌の種類の変化に関係しているという指摘もあり、健康に影響する可能性があるため、注意が必要です。

アメリカ農務省は、こうした良質な食事を分かりやすく示した「マイプレート」という図を作っています。

マイプレート(大津秀一)

1日の食事のうち、摂るべき食品や栄養素の配分が、一目で分かるようになっています。

30%の穀物(少なくとも半分は全粒穀物)、40%の野菜、10%の果物、20%のたんぱく質、そして乳製品の小さい円で構成されています。つまり、野菜と果物は1日の食事量の半分となります。牛乳を飲む場合は、低脂肪牛乳または無脂肪牛乳が良いとしています。

がんになると「治りたい」という患者さんの藁をもつかむ思いを逆手にとって、科学的な根拠は薄いにもかかわらず、特定の食品や栄養などにこだわった極端な食事療法を実践する方もいらっしゃいます。

ところが、実際に65%の死亡リスクの違いとなって現れているのは、極端な食事ではなくバランスのとれた食事なのです。

がんになっても怪しい言説にまどわされずに、バランスのとれた食事を摂り続けることが、がんと共存して長く生きるためには必要だと言えるでしょう。日々、マイプレートを思い浮かべながら「何を食べようかな」と考えるといいかもしれませんね。

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がん予防には、ビタミンDがたくさん摂れる魚が効く

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