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経営破たん後、JALをV字回復に導いた 「リーダー教育」のリアル

上野明、川名由紀、宍戸尚子

2019年07月05日 公開 2019年07月05日 更新

 

稲盛会長の特別講話を1カ月に5回聞く

――では、御社でなさった「リーダー教育」の中身を、具体的に教えて戴けますか。

上野 「リーダー教育」を進めるにあたり、何よりもトップダウンが徹底していたのが、ありがたかったです。当時の社長が「リーダー教育をやり遂げる」という大方針を早々に示してくれた。

その結果、従来どおりであれば、せめて部長を集めるくらいで行なったはずですが、そうはなりませんでした。社長以下、役員は全員参加。さらにグループ会社の経営幹部や主要部門の部長を集め、総勢52名でスタートできたのです。

川名 その際、大田氏から「男性だけに偏らないように」「JALグループ各社の経営幹部にも参加を」というアドバイスを受けました。

特に、グループ会社では、各社のプロパーの社員に参加してもらうようお願いしよう、と強くおっしゃっていました。経営再建の当事者意識を、グループ全体に広げるべきだと考えておられたのだと思います。

上野 そしてまずは「リーダーのあるべき姿」について、稲盛会長に特別講話として「高い山に登る」という話をしていただきました。「低い山を目指すのであれば、ハイキング気分で済まされる。

しかしリーダーたるもの、エベレストなど、8,000メートル級の山を目指すぐらいの気概がないといけない。そのような高い目標を達成するには、厳しさや鍛錬が必要だ」という、心構えからお話が始まったのです。

そして、「知識や見識を持っている人は多くいるが、本当のリーダーは胆識と呼ばれるものまでしっかり持っていないといけない」という話をされた。この「胆識」というキーワードは、印象的なものとして深く心に刻まれたというリーダーが多かったですね。

――その後、心構えの段階を経て、いよいよ実践的な教えに入るのですね。

川名 2回目からは稲盛会長の経営哲学の軸である「経営十二カ条」を、順を追って学んでいくプロセスです。ある日は「一条・二条・三条」まで話されて、次の機会に「四条・五条」へ、という流れでした。

上野 稲盛会長のご講話を5回、つまり1週間に1回ほどのペースで聞きました。時間は60分から最長85分。ご講話のあとでコンパを1時間ほど開催し、稲盛会長を交えてディスカッションするのを基本形にしていました。

当時は、異なる部門の役員や部長たちが、一緒にお酒を飲みに行く機会さえ、あまりなかったのではないかと思います。胸襟を開いて意見交換すること自体が、画期的なことでもありました。

もちろん、飲食費を会社のお金で賄うという発想はまったくなく、メンバーから1人1,000円程度の会費を集め、工夫してやっていました。

川名 研修は1ヵ月行なわれる予定でしたが、その間に52人のリーダー皆が一丸になってほしいという思いで、コンパでは、一緒のグループになったことのない人がなるべく全員がすべての参加者と話せるよう、毎回工夫して席の配置を考えました。

「この役員と部長は、業務上、普段話す機会が少ないだろうから同じグループにしてみよう」という感覚です。当日はそっと状況を見に行き、会話を交わしていたり、そこから新しい気づきが生まれていることがわかると嬉しくなりました。また、稲盛会長に対しても、「AさんとBさんは、すでに稲盛会長と直接話をした。Cさんは会話をしていないから、次回は同じテーブルにしよう」という配慮をしていました。小さなことですが、このようなことで、リーダー間の相互理解が確実に進んだと思います。

――稲盛会長の講話がないときは、何を学ばれていたのですか?

川名 会計の実学を学んでいました。京セラの方々のご協力を得て、同社で使用されているビデオを特別に編集して頂き、皆でじっくり見ました。また、当時の財務経理部門の参加者が「JALグループではこういう部分ができていなかった、こういう風に生かすことができる」などと自分たちにとって身近な例を用いて具体的に話し、学びを深めていました。その後、コンパで意見交換や議論をしていく流れは同じです。

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全15回、毎回必ず翌日までにレポート提出

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