ロスジェネ世代がいちばん活躍できる場所
佰食屋はこうして「やる気に溢れている人材はいらない」と公言していますが、そういった人やそういう働き方を、否定したいわけではありません。
自分の能力を発揮し、難しい課題を解決しながら、これまでにない、まったく新しい商品やサービスを生み出し、提供する。そのために労力と時間を惜しまず、その成果として高い給与や報酬を得る―。それもまた、すてきな働き方の1つです。
けれども一方で、言われた通りのことをやりたい、9時~17時の決められた就業時間内でやるべきことを丁寧にやり切って、家に帰って家族と晩ごはんを食べる。そんな、ごくごく平凡な働き方が、評価されず、望んでもいない過酷な労働状況に追い込まれていくのは、あまりに酷です。
実は、佰食屋の従業員には、「就職するまでお店のことを知らなかった」という人が多いのです。
それは、多くの場合、これまでの職場で長時間労働を余儀なくされていたから。ニュースを見るような時間の余裕や、おいしいものを食べるためにインターネットを調べるような心の余裕を持てるのは、意外とハードルの高いことなのです。
「ロスジェネ」と言われる30代~40代後半の人は、佰食屋でもたくさん活躍してくれていますが、これまでの労働環境の話を聞いていると、「どうしてこんな状況が放置されているのだろう」と憤るばかりでした。
長時間労働の無理がたたって休職を余儀なくされたり、IT化の余波や不況の影響を受けて、雇い止めや派遣切りに遭ったり、希望退職を迫られたり、いざ転職しようと思っても年齢で弾かれて、それすら「自己責任」と言われてしまう。そんな世代の人たち。
佰食屋が真っ先に採用したい、活躍してもらいたいのは彼らなのです。
一生懸命働くことがスタンダードだった人たちを大切にしたい
「9時~17時できっちり働いて、家族と一緒に晩ごはんを食べる」。
そんな平凡な働き方が、どうして叶わないのでしょうか。
日本経済の発展と衰退のその狭間で、いちばん大きな影響を受けた世代が、ロスジェネの方々だったと思います。
耐える世代、だったはずです。
バブルは弾け、コツコツと仕事をこなしながら、「ラクに稼げる仕事なんてそうそうない」「言われた通りのことをしろ」「24時間戦えますか」と必死に耐えることばかりを求められ、「プライベートの時間」などまったく保障されてこなかった世代。それこそ世の中の経営者にやりがい搾取されてきたのです。
そんなロスジェネが、そのまま歳をとって、今度はいきなり「時代遅れの世代」として切り捨てられてしまうのは、あまりに理不尽です。
彼らが持つ誠実さや、きっちりと働く真面目さを、そのまま活かせるような職場があれば、そしてこれまでなおざりにされてきたプライベートの時間もしっかり確保して、無理なく働ける環境があれば、社会人としての基礎能力を大いに発揮できるのではないか―。
だから佰食屋は、「働くことの尊さ」をわかっている彼らを積極的に採用し、大切にしています。
「残業ゼロ」「有休完全取得」といったところばかりに目を向けて「僕も働きたいんです」と、大学生から志望されることもあります。けれどもはじめから佰食屋に来てしまうと、この環境は生ぬるく感じられてしまうでしょう。
佰食屋の環境が当たり前と思ってしまえば、もしほかの企業へ転職したとき、あまりの落差にきっと疲弊してしまう。それは本人にとってもよくないことです。