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「小声で話す講師」に講演依頼が殺到する理由

小木曽健(おぎそ・けん)

2019年08月23日 公開 2019年08月26日 更新

 

もし「告白」や「謝罪」が早口だったら…

テレビやラジオでアナウンサーが話すスピードは「1分間に300文字程度」と言われていますが、全体的にテレビの方がちょっと早い傾向にあります。実際、テレビのバラエティ番組などでは、1分間に600文字以上話すアナウンサーもたくさんいます。

一方でラジオは、本当にしっかり300文字前後、というアナウンサーが多いんです。ラジオには映像や字幕がありません。純粋に声と音だけで伝えるメディアですから、リスナーが聴き取れなかったらまったく意味がなくなってしまいます。

だから聴き手が確実に受け取れる速度=300文字というスピードが、テレビよりも重要になってくるんですね。

「伝え上手」を目指す人も、最初はこの300文字というスピードを目安にしてみて下さい。なにしろ私たちは、自分が思っている以上に、ビックリするほど早口です。

試しに「1分」時間を計りながら、この本を冒頭から音読してみて下さい。自分で気が付いていないだけで、実は私たちみんな、驚くほど早口ですよ。

恋の告白や謝罪の言葉が早口だったら……相手に気持ちなんて伝わるワケがありません。早口よりも、ゆっくりの方が絶対に伝わります。

まだ駆け出しのお笑いタレントが、せっかくネタが面白いのにウケていない時って、たいてい話すスピードが早過ぎだったりするのです。もったいないでしょ?

しかもこれは、誰でも簡単にチャンレンジできるテクニックですから、挑戦しないテはありません。ラジオを聞きながら、アナウンサーの言葉をそのままソックリ真似てみるのもオススメですよ。

「ゆっくり話そう」と言いつつ……実はワタシかなりの早口なんです。週に一度ラジオのコーナーを担当しているんですが、どんなに頑張っても、1分間に400文字くらいしゃべっちゃいます。

なかなか直せないので、言葉と言葉のあいだに“間(ま)”を入れて話すように気を付けています。早口な人でも、“間(ま)”を挟むことで、ずいぶん聞きやすくなりますよ。

講演する時は、ラジオより少し早くて1分間に500~600文字くらい。ラジオと講演ではスピードを使い分けています。講演の場合、ある程度のしゃべりの「スピード感」は、ゲストをひきつける勢いにもつながります。

いったん300文字で話す感覚を身に付けられれば、あとは自然とスピードをコントロールする感覚も身につくので、その場に応じたスピード、自分に一番ピッタリくる「巡航速度」を見つけて下さい。

 

語尾「だけ」でプロっぽくなる

発声の簡単な工夫で「こいつデキる!」と思わせるワザがあります。言葉の「最後の1文字」を、意識してしっかり発音する。コレだけで、劇的に伝わりやすく聴きやすい話し方に変わります。

実は私たちの日常会話では、ほとんどの人が最後の1文字の発声をサボっています。試しにまわりの人たちの声を聴いてみて下さい。

「●●です“ね”」「●●で“しょ”」。

みんな最後の1文字で力が抜けているはず。もちろん日常生活ではまったく問題ありません。でもイザという時、相手に確実に伝えたい大事な場面では、この最後の1文字を意識的に発声することで、より情報が伝わり、気持ちが伝わり、信頼度が上がるのです。

少しワザとらしいくらい強調してみてください。実際に口に出して試してみると、劇的に違うことに気づくでしょう。こんな簡単なワザ、試さない理由がありませんよね。

 

「聞こえない」から「聞きたく」なる

さてここまでは、より「聴きやすく」するためのテクニックでしたが、今度は「聴かせない」というテクニックです。プレゼンのとても重要な個所になったら、その時、声を小さくするんです。

もちろんゲストに聴こえなければ意味がありませんから、相手に聞こえるギリギリのレベルまで、声を小さくしてみて下さい。人間は、耳から入ってくる音量が急に小さくなると、「えっ?」っと違和感を感じてイヤでも注目します。

だから一番伝えたいポイントを話す時は、わざと、声を小さくするんです。それだけで相手の意識をこちらに向けることが出来ます。

例えば、「今から、一番大切なことをお伝えします」と言う場面では“一番大切なこと”という言葉に注目してもらう必要があります。そうしないと、その後に続く「大切なこと」が伝えられないからです。その時、

「今から、一番大切なこと(大声)をお伝えします」
「今から、一番、大切なこと(小声)をお伝えします」

のどちらが、より注目を集めることができるか、文字を見ただけでもピンときますよね。押してダメなら引いてみろ、はプレゼンでも同じなのです。

「それが謝罪の場面だったらブッ飛ばされるんじゃないかな?」と思われたアナタ、正解です。だから謝罪の場面では使えません。その代わり、謝罪では「沈黙」というテクニックが使えます。

沈黙と言っても謝罪しながら黙り込むワケではありません。そんなことしたらやっぱりブッ飛ばされます。そうではなく、一番伝えたい大切なポイントの直前に、沈黙ギリギリ手前の「タメ」を差し込むのです。

重要なフレーズ、一番伝えたい気持ち、「申し訳ございません」「好きです」「結婚して下さい」「ありがとうございます」……とにかく、一番伝えたいメッセージの直前に、無音ギリギリ、相手が「?」となる寸前の「タメ」を差し込むことで、ゲストの注意をひき、一番伝えたいメッセージをより確実に効果的に伝えることが出来ます。

実はこの「タメ」、2時間ドラマのクライマックスシーンでよく使われているワザなんです。崖に追い詰められた犯人役が、主人公に「犯人はあなたよ!(ジャーン)」なんて指を指され、観念して罪を告白するセリフの直前、ほぼ確実に「タメ」が入ります。

だって、「犯人はお前だ」「そうそうアタリ、良く分かったなー」じゃ、オチるものもオチないですからね。

私、以前は「伝えたい」気持ちが先走ってしまい、声を張り上げ、マシンガンのように早口でギャンギャンしゃべっていました。ここに書いている悪い例を全部やってたんです。だから伝わったり伝わらなかったり……いやぁ、布団かぶって反省したい。ゴメンナサイ。

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