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生き方

「成功したプロ野球選手」たちは、親から何を教わってきたのか?

仁村薫(元プロ野球選手),真田幸光(愛知淑徳大学教授)

2019年11月25日 公開 2022年07月08日 更新

 

二軍の選手をピアノの演奏会に連れて行った理由

弟(仁村徹氏)が中日ドラゴンズの二軍監督で、私が二軍の指導者をつとめていたとき、当時の星野仙一監督に「お前たち二人で、次世代の若者をなんとかしろ」と言われました。

そのときに考えた指針が「二軍の場は、教育の場」ということです。
「教育の場」ということは、フィールドで何を学ばせるのか。

一軍で技術的なことや様々なことで悩んだ選手が、二軍のフィールドに帰ってきたときに、何か自分の昔を思い出して、原点に帰ることができる。

また指導者である私達も人を見て法を説け、ということを勉強する――二軍の場を、そんなボールパークにすることを目指しました。

そのときにも意識したのが、プロ野球選手の教育の場といっても野球オンリーではなく、根本は人間教育ということです。

ですから若手の選手にできるかぎり野球以外の世界にも触れてほしいと考え、様々な機会をつくりました。

あるときは、愛知県芸術劇場に選手10人くらいを連れて行ってピアノの演奏を鑑賞しました。

「そこで一人で、2時間、3時間演奏をしているピアニストが1日にどのくらい練習していると思うか?」
「一人で3時間舞台に立つということは、毎日7時間、8時間練習をしているはず、それを自分の野球に当てはめてみるとどうだろう。君たちは、どれくらい心をこめて練習をしているだろう?」

そういったことを問いかけるのです。

またあるときは、選手に武田鉄矢さんの舞台を鑑賞させたこともあります。武田さんご自身をテーマとした舞台です。

「それを見て、何かを感じて欲しい」そう選手に伝えました。
そうやって違うジャンルに触れて、それを自分の仕事である野球に取り入れる――自分に何が足りないか気づくヒントにしてほしいと思っていたのです。

真田さんにも若手選手に国際情勢の講義をしていただき、世界から見た日本、隣国との関係をわかりやすくお話ししていただきました。世の中の動きを学ぶことを通して、選手に自らの言葉で語れる人になってほしいと願っていたからです。

そんなふうに様々な世界に触れることで、何かを感じてほしい――逆にいえば、何も感じられないような人間は、現場で指導者がどんなことを言ったって、まず心に響きません。

様々な経験を通して心のスキルアップを図った選手に、今度は現場で私たちが野球の話をして、成長していってもらう。その選手が一軍の舞台でカクテル光線の中で光を放つ。そうして、はじめてファンを魅了する選手は生まれるのです。

野球ファンはもちろん、野球にあまり興味ないけれど、この選手には興味ある、何か気になるという人までが球場に足を運んでくれる。私はそれこそが、本当のファンの獲得だと思っています。

そういう選手をサポート、本当の意味での野球の底辺の拡大につなげる――それが今、私の取り組んでいる社会への貢献です。

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