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ノーベル賞経済学者が直言「高収入の人が税金を払えば解決」

ポール・クルーグマン(プリンストン大学教授),大野和基〔聞き手〕

2019年09月26日 公開 2023年01月05日 更新

 

格差を解決する2つの方法

――「AIによる大量失業」が取り沙汰される背景には、世界的に進む格差の問題があるでしょう。経済格差を解決する政策はありますか。

【クルーグマン】2つの政策が考えられます。まず、「前/分配」です。つまり、実際に支払われる賃金を変えるのです。労働組合をつくって最低賃金を保証させる。その仕事から得られる賃金が正当なものであるようにするのです。労働者の交渉力が限られたものだとしても、歴史的に見るとそれはうまくいっています。

現在、アメリカでは労働組合は最低限の働きしかしていませんが、多くのサービス業の仕事は、集団交渉によって賃金を上げることができます。パーソナルケア・サービス業では労働者が不足していますが、賃金を上げれば解消するでしょう。それで人は集まり、中間層の仕事をつくり出します。パーソナルケア・サービス業だけでは、中間層の仕事をすべてつくり出すには不十分かもしれませんが。

次は「再/分配」です。これは税金と資本移転を意味します。なお、近年AIの普及によって失業する者に対し、ユニバーサル・ベーシックインカム(現金支給や、所得が一定水準に達していない人に税金を還元する「負の所得税」といわれる仕組みによって国民全員に社会保障を与える)を保障せよ、という議論があります。

しかし、そもそもアメリカで誰もが暮らしていけるだけのユニバーサル・ベーシックインカムを提供しようとしたら、莫大な額になる。個々の状況に応じてベネフィットを提供する方法、つまり本当に給付を必要としている人にだけ提供するほうがはるかに安くつきます。

だから私は、ユニバーサル・ベーシックインカムに賛成できません。繰り返しますが、あまりにも莫大なお金が必要になるからです。仮にAIの普及によって大量に失業者が出るとしても、そのとき再考すればいいと思います。現状では、そういった問題は起きていません。

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分配のための富はすでにある。どう使うのかが問題だ

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