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イスラエル人が「好きなことをして生きる」を実現できる理由

真田幸光(愛知淑徳大学教授)

2019年12月10日 公開 2022年07月08日 更新

 

「好きなことをして生きていく」100年以上続く生活共同体の仕組み

3日目は日本大使館で講義を受けた後、カイザリヤ、ガリラヤを経由、ナザレに入りました。

日本大使館での講義、その後、地中海の港町・カイザリヤに入り、ローマ時代の水道橋、円形競技場などの遺跡を見学。そして、大地溝帯の北部に位置するガリラヤ湖を望みながら、ガリラヤ地域に入りました。

さて、そのガリラヤではイスラエルの集産主義的協同組合と訳される「キブツ」を見学したので紹介します。デガニア・キブツといわれるキブツで受けたガイダンスは以下の通りです。

●訪問したキブツは、100年を超える歴史のある生活共同体であり、皆、基本的にはキブツメンバーとしてイコールフッティング(条件は同等)である。リーダーはいない。

●キブツメンバーとその家族は、皆でキブツを所有し、生産をし、分かち合うことを旨としている。共産主義ではなく、社会主義的共同体である。

●キブツは原則、ビジネス的運営がなされている。基本的にはメンバーが皆好きな仕事をして良い、そして、その仕事から得た利益はキブツ全体でシェアすることとなっている。

●このキブツには約200家族、そして、約800人が暮らしている。キブツのメンバーはシェアホールダーとなる。

●キブツメンバーの子ども達は30歳くらいになり、希望をして、キブツメンバーに認められるとキブツメンバーとなることができる。キブツメンバーにならなくても良い。

●ロシアや中国本土ではキブツと似たシステムがあったが失敗、イスラエルでは成功し、拡大もしている。

●キブツでは、自立性、自主性が重んじられている。ただし、小さな共同体での成功モデルであり、大きい組織で、キブツのような組織運営を図ることは難しいかもしれない。

●義務的仕事は皆が平等にローテーションをしている。

●キブツメンバーの権利は相続できない。キブツメンバーになるには、キブツメンバーの子どもは優先され、また、犯罪歴などがない上、手に職を持っている人は、原則として新メンバーとして受け入れられる。

●このキブツでは、去年の12月から給料制になった。

●キブツメンバーは安息日には食事をともにし、心を一つにすることを旨としている。

好きなことをしていることが生産性を上げる――皆がそうしたことを理解できるサイズは、400メンバー程度までのキブツであるらしく、その程度の組織のキブツの運営はスムーズ。

即ち、それぞれに基本的には不満はなくキブツは運営されるであろう――ガイダンスをしてくれた方は、ポーランドから来た三世の人でしたが、そう説明していました。

個人的な解釈として、キブツとは、日本でいえば昔の小さな村落共同体、江戸時代の長屋のような仕組みだと感じます。そのメンバー皆が得意な仕事をし、キブツそのものを繁栄させ、皆が幸せに生きるという精神の下に運営されているものなのだと感じました。

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