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日本人の92%は「相続税がかからない!?」…FPが教える”コスパの良い相続”

篠原充彦(篠原FP事務所代表)

2020年04月06日 公開 2022年05月25日 更新

 

「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」は何が違うのか?

こういう時に有効なのが、遺言書です。トラブルが発生するのは、遺言書がなく、相続人同士が協議して決めるしかないからです。遺言書は基本的に遺言内容に従って相続するので、面倒な分割協議をしなくて済みます。

遺言書は大きく「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。

自分で書いて作成するのが「自筆証書遺言」で、プロに書いてもらって作成するのが「公正証書遺言」というイメージです。費用的には、「自筆証書遺言」は実質0円。公正証書遺言は、プロに作成してもらうので遺産の額によって違いますが、費用はかかります。

2019年1月に民法改正により自筆証書遺言の財産目録の作成についてはワープロでの記入も可能になり簡素化したとはいえ、遺言書というのは、ただ書いて置いておいたらいいだけということではなく、細かいルールがたくさんあります。

日付、署名、押印はもちろんのこと、複数枚になると契印(二枚以上の書類が連続していることを証明するための印)が必要だったり、遺産分割があいまいな内容でないかどうかなど、この遺言書が有効かどうかを家庭裁判所に判断してもらう必要があるのです。一箇所でも不備があった場合、その遺言書は、無効になります。ただの紙切れになるということです。

そうならないためにも、プロに書いてもらう公正証書遺言をお勧めします。公正証書遺言は公証人に遺言内容を口頭で伝えてそれをもとに公証人が作成します。

公正証書遺言のメリットは、遺言書が紙切れになる心配もなく、保管場所は公正役場で保管できるので、紛失の恐れもなく、家庭裁判所のチェックも必要ないことです。

亡き人の想いが詰まった遺言書、これが無効になった場合、相続人同士の分割協議になりますが、話がまとまらず訴訟に発展し、訴訟費用や弁護士を雇う費用、裁判所が遠方だった場合の交通費、長引いた場合の本業への影響、精神的苦痛などなど考えると、10万円前後の費用がかかっても最も確実な公正証書遺言の方がコスパ的にお得です。

 

相続は「遺産」だけではない。だからきちんと話をしておく

これまでの話は、相続する遺産があった場合の話ですが、相続は何もプラスの財産ばかりではありません。亡くなった方が借金をしていた場合、いわゆる「負の財産」があった場合のことも考えておく必要があります。

亡くなった方が残した借金は相続人が背負わなければいけません。この場合、「相続放棄」という手続きをすることで、借金を相続せずに済みますが、相続開始があったことを知った時から原則3カ月以内に行わなければいけません。

3カ月という期間は非常に短いです。お葬式や遺品整理、そして、故人の財産などを調べてたらあっという間に過ぎてしまい、後で借金があると知っても相続放棄ができないということになりかねません。それをよく知っている取立人は半年後くらいに、借用書と請求書と共にやってきます。

一番大切なことは、今のうちから親子でお金の話をすること。相続が起こってから、亡くなってからでは遅い事があるので、生きている間に家族にと遺産について話をしておく必要があります。

プラスの財産を聞きにくいのであれば、「オトン、銀行や消費者金融などで借金してないか? してるんやったら、今のうちに言っといて」とそれくらいはきっちり家族で把握しておくことが大切です。

お金の話はどうしても子どもからは話しにくいことなので、お父さん、お母さんから遺産について話してあげるというのも1つのマネー対策になります。

もし、遺産について話にくいのなら、こんな葬式をしてほしい、こんな墓にしてほしい、という話をおした後で遺産の話を切り出すと話しやすいと思います。負の財産も相続する、ということを忘れないように!

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