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「先の見えない不安」を払拭するために、“ノートとペン”でできること



2020年04月14日 公開

チカイケ秀夫、鬼塚忠(作家エージェンシー代表)

チカイケ秀夫&鬼塚忠

《パーソナル ベンチャーキャピタルCBOのチカイケ秀夫さんが、「原体験」をよりどころに人生の軸や土台をつくる方法を説いた著書『原体験ドリブン』(光文社刊)を上梓した。

ドリブン(driven)とはdrive(ドライブ)の過去分詞で、「~に突き動かされた」「~に駆り立てられる」の意味。つまり原体験に突き動かされると、「強いモチベーション」や「最後まで粘り強くやり通す力」が湧いてきて、人生の困難に打ち勝つことができる――この本のタイトルには、そんな意味が込められている。

本稿では、作家エージェントでかつ自身も『花戦さ』などのヒット作品の著者でもある鬼塚忠さんが、チカイケさんに、自分の原体験をどのように掘り起こすか、そしてそれを自分の人生や仕事にどう活かすかを尋ねた》

 

原体験を自覚している人は「伝わる」

(鬼塚)ズバリ「原体験」って何ですか?

(チカイケ)「原体験」とは自分のルーツです。ルーツといっても、家系のことではなく、私たちのあらゆる行動の原点、考えのもとになりうる、大きな体験などのことを指します。自分が今もっている判断基準や価値観は、原体験をもとにつくられています。

(鬼塚)「大きな体験」って、たとえばどんなものでしょうか?

(チカイケ)幼い頃に経験した鮮烈な出来事、あるいはそれに基づく感情といったものです。幼い頃と言いましたが、それは1回の時もあれば、数年など長い期間にわたるものもあります。また、親やきょうだい、親戚、友人、教師などとの関係の中で、育まれたものもあります。

いずれにしても、自分の考え方のベースはそこにあるということですね。

(鬼塚)原体験を意識することで何か変わるのでしょうか?

(チカイケ)日頃から自分の原体験を意識し、それにもとづいて生きていくようになれば、人生の大きな選択も自信をもってできるようになります。他人の意見に振り回されたり、迷ったり、不安を抱えることが少なくなります。

そのことによって、「自分の人生を生きている実感」「人生のコントロール感」が増してくるのです。

(鬼塚)なるほど。それは、迷いがなくなるというのはいいですね。

 

過去を振り返ることで変わる「現在」

ところで、なぜ、チカイケさんは原体験に注目をするようになったのですか?

(チカイケ)クラブでVJ(ビジュアルジョッキー)をしていた頃、uCCI(ウッチー)さんと出会ったことが大きいです。uCCIさんは、現在プロデューサーやキャスティングコーディネーターとして活躍中ですが、当時はプロのダンサーでした。

そんなuCCIさんは幼い頃から難聴があり、肌色の補聴器を付けていました。彼との雑談の中で、彼が「子どもの頃に、そのことで嫌な思いをしたこと」「人と違うことにコンプレックスを抱いていること」がわかってきました。

(鬼塚)uCCIさんにとって、補聴器は「ネガティブなもの」だったんですね。

(チカイケ)そうです。補聴器だけでなく、そのもととなった難聴も、人とは違う「障がい」としてネガティブなものと捉えていました。

uCCIさんと話を重ねる中で、「子どもの頃の嫌な体験は変えることはできない。でも、当時の体験をふり返ってその意味を捉え直してみれば、そこから来る現在の考え方も変えることができるかもしれない」と思うようになりました。

そうして、uCCIさんと話す中で、浮かんできたのが「デコレーション補聴器」のアイデアです。uCCIさんが自作したその補聴器は、オシャレな彼らしく、スワロフスキーでデコレーションが施された、それはゴージャスなものでした。

そこには、補聴器を「隠すもの」から「魅せるもの」へと変えるという発想の転換があったのです。このデコレーション補聴器は話題になり、メディアから取材依頼が何件もあったり、uCCIさんのところへ「同じものをつくってほしい」という依頼が殺到するということがありました。

(鬼塚)補聴器にデコレーションを施すという発想は、なかなか出てきそうにないですね。

(チカイケ)やはり、3歳から補聴器を使い続けてきて、それにまつわる体験やひもづく感情を数え切れないほど味わってきたuCCIさんだからこそ、出てきた発想であり、だからこそ、それが多くの人の心を掴んだのだと思います。そういう体験のない僕には絶対思いつかないアイデアです。

人の心を掴むということでいえば、クラブの出演アーティストの中に「テクニックは人並みでも言葉が響く人」と「テクニックは抜群でもメッセージが伝わらない人」がいることがわかりました。

両者の違いは、「自分のテーマに自覚的であるかどうか」です。つまり「言葉が響く人」のほうは、強い原体験があり、アーティスト自身がそのことを自覚していて、言語化してパフォーマンスに織り込んでいたのです。

(鬼塚)それ、とてもよくわかります。私も職業柄たくさんの人の原稿を読むのですが、文章は荒削りでもグッと心を掴まれるものがあります。そういう原稿を書く人は、自分の強い原体験を表現に活かしているんですね。

(チカイケ)表現の世界は、それがはっきり表れますね。

 

原体験を掘り起こす「旅」

(鬼塚)自分の原体験を知る方法について教えてください。

(チカイケ)はい。それには原体験を掘り起こす作業が必要になってきます。私はそれを旅にたとえて「原体験ジャーニー」と読んでいます。

(鬼塚)自分の内面を深堀りしていく「旅」ですね。

(チカイケ)まさにそのとおりです。

この原体験ジャーニーには、1人で行う「自己ワーク」と、2人1組で行う「ペアワーク」の2種類があります。

初めて原体験ジャーニーにトライする人は、深堀りしあう相手を探すのが難しいと思うので、自己ワークから始めるのをおすすめします。

基本の手順は、

①ノートとペンを用意する
②「基本の5項目」に答える形をとる
③ ②のそれぞれの項目について、自ら「なぜ」と問いかけることで深堀りしていく。答えはノートの見開きに書き込んでいく

の3つです。
②の5つの項目とは、

(1)今やっていること
(2)時間を忘れてできること
(3)好きな言葉
(4)やりたくないこと
(5)将来やりたいこと

です。たとえば①の項目の場合、こんな具合に深掘りしていきます

 「①今やっていること:ウェブデザイナー」
→「なぜウェブデザイナーになったのか?」
→「デザインの仕事をしたくて採用された会社だったから」
→「なぜデザインの仕事をしたかったのか?」
→「自分の才能を活かせると思ったから」
→「才能があると思ったのは何がきっかけか?」
→「学生時代に自分でデザインしたブログが評判になったから」
→「いつからデザインをするようになったのか?」
→「中学校で美術部に入ったのがきっかけ」
→「なぜ美術部に入ったのか?」
→「絵のうまい友だちがマンガを描いているのを見て、自分も絵を上手に描けるようになれたらと思って」……。

こんなふうに、それぞれの項目について、自分でどんどん話を掘り下げていきます。

ちなみに、上の例に挙げたウェブデザイナーの人の場合、(1)以外の項目については、

(2)時間を忘れてできること=ジョギング
(3)好きな言葉=朝の来ない夜はない
(4)やりたくないこと=頭ごなしに命令してくるクライアントの仕事 
(5)将来やりたいこと=ウェブデザイナーとして独立すること

でした。

そして、それぞれを深堀りしていった結果、「幼い頃、兄に『絵がヘタ』と言われ、とても傷ついたこと」「子どもの頃、父親が社員や業者の人に『社長、社長』と言われ、とても誇らしく思っていたこと」が、原体験として浮き彫りになってきました。

この人は、それを拠り所に、ウェブデザイナーとしてもっと腕を磨き、やがては独立して自分の事務所を構えたいという強い目標ができました。

(鬼塚)どの段階までさかのぼればいいですか?

(チカイケ)目安となるのは、「この体験があったから今の自分はこうなっているんだ」という「腹落ち感」や「納得感」が自分のなかにあるかどうかです。

そして、「なぜ?」をひたすら繰り返す中で、「これ以上質問することも答えることもできない」ところまでたどり着いたらそこが原体験、ということです。

年齢でいうと、3歳前後までさかのぼっていけば、かなり強い原体験が得られると思います。

(鬼塚)私は現在54歳なので、半世紀もさかのぼらなければなりませんね(笑)。

 

今こそ「原体験ジャーニー」を

(チカイケ)今、コロナウイルス感染の恐怖で、みなさん落ち着かない日々を過ごされていることと思います。「いったい何を信じて生きていけばいいいのかわからない」と不安に思う人も多いでしょう。

(鬼塚)連日のように、「感染者が○○人、死者が✕✕人」という報道がされていて、どんどん気が滅入ってきますね。僕の周りでも、「このままだとウツになる」と悲鳴を挙げている人が何人もいます。

(チカイケ)こういう時こそ、自分の軸や土台がしっかり固まっている必要があります。自分の軸や土台が固まっていれば、情報が更新されるたびに不安な気持ちに押しつぶされるようなこともなくなります。

週末の外出自粛で時間ができたという方や、休校ですることがないという学生さんは、この機会に是非「原体験ジャーニー」を試してみてください。



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