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社会

「話を聞いていない!」と叱られがちな男性が、実は持っている“潜在能力”

黒川伊保子(感性リサーチ代表取締役)

2020年04月25日 公開 2022年06月30日 更新

 

無我の境地とはいかなるものか

男性の脳の神経信号図の写真を最初に見たとき、私は、ある僧侶のことばを思い出した。文筆家としても高名な釈 徹宗(しゃく てっしゅう)氏である。

「無我の境地とはいかなるものですか?」という私の質問に対し、なんとも見事な回答をくださったのだ。曰く─黒川先生、それはね、目の前を蟻が通り過ぎたとする。その蟻の黒い点が網膜には映るが、蟻と認知しない状態です。脳の機能を追究する女性研究者に、この回答は奇跡と言っていい。

のちに、男性脳の信号図を見て、このことばの意味を「目で見て納得する」ことになったのだから。そしてここに、「男性たちへの深い理解」が生まれた。

 

戦国武将は、なぜ座禅を組んだのか

そう、男性たちが、日ごろぼんやりするのは(テレビのニュースを観ながらぼうっとしたり、妻の話についてこられなくてぼうっとするのは)、無我の境地なのである。

目の前の「世俗」から離れて、脳を精査している瞬間なのだ。おそらく、これをすることによって、空間認知力を研ぎ澄ましている。日ごろ、ぼうっとする才能が高い男子こそが、とっさの判断力、有事の危機対応力が速く的確なのに違いない。

その証拠に、戦国の武将たちは、座禅を組んだではないか。わざわざ、ぼうっとする時間を作って、空間認知力を鍛えたのである。脳の「レーダー機能」を充実させるために。ゴール指向問題解決型の回路を活性化させるために。センサーもレーダーもない時代、リーダーの一瞬の判断が、組織の存亡を決めたのだから。

しかしながら、政治力には、プロセス指向共感型の感性も必要である。世俗を見抜くのに長けた能力。歴史に名を残す名将たちは、二つの感性をハイブリッドで使えるタイプか、自分に欠けた素養を補佐する参謀(妻・愛人も含む)を持っていたか、そのいずれかだと思う。

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