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社会

「話を聞いていない!」と叱られがちな男性が、実は持っている“潜在能力”

黒川伊保子(感性リサーチ代表取締役)

2020年04月25日 公開 2022年06月30日 更新

 

男性の脳は、ゴール指向問題解決型を優先する傾向がある

空間認知力を駆使する、ゴール指向問題解決型。それは、荒野に出て、危険な目に遭いながら、仲間と自分を瞬時に救いつつ、確実に狩りの成果を出して帰ってくるための、脳の使い方である。

男たちが生存可能性を上げるための真髄が、男性脳にはゆるぎなく搭載されている。何万年もの生殖(その能力が高い男性脳が多く子孫を残す)というフィルターによって、研ぎ澄まされてきたのである。

ペンシルベニア大学が発表した男女脳の神経信号図を見ると、男性の脳の典型的な使い方とされる図では、右脳と左脳の信号を断っている様子が窺える。

右脳は感じる領域、五感から入ってきた情報を統合してイメージに代える領域である。これを、脳の中心にある脳梁を介して、左脳に持ってくることで顕在化させる。

右脳と左脳の連携信号が一本もないということは、「五感に入ってくる情報を感知してはいるが、それが何かを認知していない」ことになる。
ということは、この被験者、はたから見れば、ぼうっとして見えるはず。

なのに、脳の神経信号の様子は、「究極の活性状態」である。脳を上下にも奥行きにも、広く深く使い、空間認知の領域を駆使しているのがわかる。つまり、「目の前のごちゃごちゃを気にせずに、脳の空間認知領域を究極なまでに精査している状態」と言える。

 

ゴール指向問題解決型の脳は高性能レーダーである

現実空間から意識をふんわりと外して、脳の仮想空間を精密に使う。まるで、センサーの情報を現実空間の画像に重ねる、自動車のバック誘導画面のような機能(あるいは、スターウォーズの戦闘機乗りが、武器の照準を決めるときに使う人工知能レーダーのような機能)をこの脳は有しているのである……!

狩りの獲物に照準を定めるとき、地図もGPSもない時代に地の果てまで行って、元の場所に帰ってくるとき、男たちは、この、「現実空間」からしばし意識を浮かして「脳の仮想空間」を精査する機能を使ってきたに違いない。「現実空間」と「仮想空間」がぴたりと重なった瞬間、男性たちは躊躇なく、全力で踏み出す。

日々の「ぼんやり」は、その「意識を浮かす」のエクササイズだったのである。とはいえ、もちろん、ゴール指向問題解決型は、男性脳だけの機能じゃない。女性にも、その能力を高く使う者がいる。

つまり、「ぼんやり」も、厳密には男性の専売特許じゃないのだ。「男たちのレーダー機能」を礼賛して、「男たちのぼんやり」を許すキャンペーンをする以上、これを付け加えておかなきゃね。

女子大の物理学科にいた私は(物理学科にして、クラスメートが全員女性なのである!)、理系の女子たちは、男子並みにぼんやりする人が多いのを経験で知っている。「女子のぼんやり」だって、大目に見てほしい。

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