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ちゃんと意見が言える子に! 家庭でやるべき「アグネス流、これからの子育て」

アグネス・チャン《歌手、エッセイスト、教育学博士》

2020年05月03日 公開 2020年05月25日 更新

いつでも自分の意見を言えるように訓練する

AIの時代には自分の意見をもつことが重視されます。AIがもっているのはみんなの意見をまとめた「平均値」「平均的な回答」です。だからこそ大切なのは、誰ももっていない自分の意見を言えることです。時には100人の中で一人しか考えないような独特の意見かもしれないし、あるいはごく普通の意見かもしれないですが、それでもいいのです。自分の意見をもち、それを表現する訓練をしましょう。子どもから独特な意見が出たら「おっ!面白い考えだね」とほめます。一般的な意見のときは、「ママもそう思うわ」と同意しましょう。意見を出したことに意義があるのです。

親は子どもと会話するとき、子どもの意見を引きだせるように、意識して会話を掘り下げるようにしましょう。

先ほどの例でも、「葉っぱが多い花は好きではない」と子どもが言ったときに、「ああそうか」で終わらないように。「じゃあどんな花が好き?」「どうして?」「そうだなあ、ママはねえ……」と追求していきます。それは親にとっても訓練が必要です。「あなたはどう思う?」「あなたならどうする?」を口癖にするといいかもしれません。やり取りに少しずつ慣れてきたら、「これは花に見えるけれど、本当は葉っぱかもしれないね」など、話を発展させていくのです。

子どもが、自分の話は相手にとって興味深い話だった、人のためになった、という体験をすることで、次からはもっと早く意見が出てくるようになります。

いまの社会では、自分の考えを素早くまとめて意見として言えることが求められています。しかし、子どものときから繰り返し訓練をしていないと、自分が意見を言うべき大事な場面で、考えをまとめるのに時間がかかってしまいます。

大学生になっても自分の意見をすぐに言えない学生がいます。私が大学で教えていたとき、学生に急に質問すると、びっくりして自分の考えを言うことができず、隣の人に小声で尋ねたりしています。私はあきらめません。「ほかの人に先に聞いて、その後でもう一度あなたに戻りますよ」と言って時間を与えるのです。そして最後にもう一度意見を言えなかった学生に質問します。すると、今度はちゃんと意見を言えるのです。意見がないのではなく、自分の意見を言う習慣がなかったり、随時考えていないだけなのです。時どき、とってもいい意見が出てきます。私は学生たちに再度、チャンスを与えますが、普通の先生なら「答えられないのなら、次の人どうぞ」と言って、もうチャンスはないでしょう。「この子は意見を言えない子だ」と評価されてしまいます。もったいない話です。

このように、いつでも自分の意見をすぐにまとめて言う力を小さい頃から養っておくことは大事なのです。
 

好きなことに詳しくなると情報の提供者になれる

子どもは、自分が詳しく知っていることに関しては進んで話したくなるものです。普段はおとなしくてあまり話さない子が、たとえば恐竜のことになると急にしゃべり出すことがあります。

だから、意見を言うためにはできるだけ多くのことを知っていると役に立ちます。トリビアでも何でもいいのです。「情報の提供者」になれるようにします。ほかの人が知らないことを知っていれば、みんな面白がってくれます。その快感を覚えた子どもは、さらに知識を仕入れたくなります。

うちの長男はつい最近、香水についての分厚い本を読んでいました。長男は典型的な「情報の提供者」タイプで、トリビアから専門知識まで楽しく学ぶ博学ものです。人の知らないようなことをたくさん知っています。「ママはどの香水を使っているの?」と聞くので、その本を見て「これよ」と私が伝えると、彼は「ああ、センスがいいね」と、香水についてかなり詳しい評価ができるのです。だからといって、自分が香水をつけるわけではありません。どんなときでも話題が豊富で、情報の提供者になれるのです。我が子ながら、長男の話の内容が面白いから、だから後輩から尊敬され、先輩からかわいがられるのかなと……。

また、三男はとても人懐っこく責任感が強い子でした。小さいときに、たまに私と三男の2人だけの食事になったときには、私のために話題を用意しておいてくれました。「ママ、これ知ってる?」と。それが簡単な話題で、すぐに終わってしまったときには、「ママ、後ろの絵きれいだよ」などと一生懸命別の話題を探し、話を途切れさせませんでした。私は「この子は世渡り上手になりそうだな(笑)」と思いました。別に、世渡り上手になる必要はないのですが、「意見をもつ」「知識がある」という子どもに育てることは大切です。それは親次第だといえます。

学校の教科書も親子で先に読んでおいて、その単元に沿ったいくつかの知識を子どもの頭に入れておくと、授業のときに役に立ちます。授業中に先生が意見を求めるときに、子どもはみんなに話したくなって「ハイ、ハイ」と積極的に手を挙げるようになるのです。反対に知識がないと、指されたら大変だと考えてしまいます。準備してあげることで、子どもは授業を楽しく受けることができます。

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