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生き方

議論のフリして自分の主張だけをゴリ押す人…「議論属」が生み出す“時間のムダ”

石川幹人(明治大学教授)

2020年06月05日 公開 2024年12月16日 更新

議論のフリして自分の主張だけをゴリ押す人…「議論属」が生み出す“時間のムダ”

「いやいやいや、違うでしょ」「そういう意見もありますね、でもー」
「ああ、それ私も知ってました」…相手の意見に対して、「議論という名の反論」をはさむことを好む。

一見、建設的に見えて、自分の意見が通らないとすぐに不機嫌になる。人格攻撃や揚げ足取りで論点をずらし、会議を迷走させることもしばしば。

そんな「議論属」には、正面から相手をせず、別の角度からアプローチすることが重要だと語る、進化心理学、認知行動論の第一人者である明治大学教授の石川幹人氏。

本稿では石川氏の新書『職場のざんねんな人図鑑〜やっかいなあの人の行動には、理由があった! 』より、健全な議論を妨げ、周囲を混乱させる「議論属」の生態と対処法について解説した一節を紹介する。

※本稿は石川幹人著『職場のざんねんな人図鑑〜やっかいなあの人の行動には、理由があった! 』(技術評論社)より一部抜粋・編集したものです。

 

「勝ち負け」に必死で、健全な議論を妨害

「いやいやいや、違うでしょ」
「ここ、誤字直せば?」
「そういう意見もありますね、でもー」

人が意見を発するだけで、「議論に見せかけた反論」を仕掛けてきます。話を進めてみると、議論したいというより、自分の論理や考えを通そうとしている言動が見え隠れ。

その証拠に、自分の意に沿わない結論に至ったり自分の案が却下されたりすると、途端に口数が少なくなったり、いちゃもん口調に変化することが。話が終わったあと、会議室やバックヤード、喫煙室でぶつくさ文句を言う姿も見られます。

「ありえない……あいつら、わかってないって……」

議論が主題から外れて、人格攻撃に終始していることに辟易してこちらが閉口してしまうと、「こっちの言い分が勝った」「言い返せなくなった」と勘違いする側面も持ち合わせています。こちらが反撃したり痛い点を突いたりすると、

「でも、そういう言い方ってどうなの?」

「弱いものいじめだ」

「上司の言うことが聞けないのか」

などと、話の揚げ足取りや被害者気取り、はては階層構造を見せつけて言うことを無理やり聞かせたり、議論上勝ったように見せかけようとしてきます。

なお、会話に長けた議論属は、「そうですよね、それ私も知ってました。さらに付け加えると……」

と、相手を肯定するように見せて、自分の優位性を見せつける道具として議論を使うこともあります。建設的な話を進めるうえで障害になりやすいにも関わらず、議論属は議論に参加したがっているので、扱いが厄介です。

 

「勝負にこだわる人間の本性」が根底に

議論の一般的な目的は、合意形成です。「どこで喫煙を許すか」など、皆の決まりをすぐに多数決で決めてしまうのは、民主的ではありません。議論をして、相手の立場や意見を理解して、各自の意見の誤りや限界を明らかにし、相違を乗り越えた「合意」を目指すのです。

しかし、議論属は、議論をする場を「勝負の場」と考えています。一見「教えてあげる」といった善良な姿勢を見せますが、主張のほころびを指摘されると、畳みかけるように言葉を重ねていきます。ときには高圧的に「あなたのような人の言うことは何も信用できない」などと、相手の人格を非難するのです。

議論属の勝負へのこだわりは、人間の本性に由来します。人間は、戦いによって上下関係を築き、配偶者やなわばりを確保していました。上に立てば生活が有利になった歴史があるので、生まれながらに上を目指す傾向が進化しています。議論属の場合、その上に立つ手段が暴力から議論に転換しているのです。

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誤りを認められない心理が邪魔をする

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