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コロナ暴落&暴騰で投資ブームも拭えぬ不安…森永卓郎氏が注目する「日本株以外の投資先」

森永卓郎(経済アナリスト/獨協大学教授)

2020年06月25日 公開 2023年12月27日 更新

 

戦後最悪の不景気なのに、アメリカ株が上昇?

2020年5月8日に4月分のアメリカの雇用統計が発表されました。

景気動向を反映するとされる非農業雇用者数は、前月比2050万人も減って、世界恐慌以降で最大の落ち込みとなっています。

さらに失業率も3月の4.4%から4月は14.7%と3倍以上に上がりました。これまで戦後最悪だった1982年11月の10.8%を大きく上回って、戦後最悪を更新したのです。

リーマン・ショック後の09年10月でも、失業率は10.0%でしたから、今回のコロナ・ショックは、リーマン・ショックよりもはるかに大きな衝撃を経済に与えたと言えるでしょう。トランプ大統領は、新型コロナ対策で、2兆9000億ドルもの財政出動を実施しましたが、焼け石に水だったのです。

ところが、雇用統計が発表された日のニューヨークダウは、前日比455ドルも上昇して、2万4331ドルになりました。シラーPERが25倍を一定期間超え続けるとバブルが崩壊するというのがこれまでの経験則です。

シラーPER25倍は、ニューヨークダウに当てはめると2万3000ドルになりますから、アメリカの株価はすでに新たなバブルに突入したことになります。

リーマン・ショックの際は、2008年9月の1万1790ドルから、半年後の09年3月に6470ドルまで、45%も下げました。だから私は、コロナ・ショックで半額ぐらいには株価が下がるだろうと予測していたのです。ところが今回は2月の2万9551ドルから、翌月には1万8591ドルへと38%下げた後、6月1日には底値から37%も上昇したのです。

正直言って、私はこの戻しをまったく予測していませんでした。

じつは、株高の揺り戻しは日本も同じです。1月の2万4116円の高値から3月には1万6358円へと32%下落したものの、6月1日にはその底値から34%値を戻しているのです。

 

FRBも世界的な「二番底」を警戒している

もちろん、日本経済は、最悪の状態です。

そもそも、2019年10月の消費税引き上げで10~12月期のGDP成長率が年率7.1%下落したことに加えて、2020年1~3月期は年率3.4%下落、4~6月期は、5月3日に『産経新聞』が発表したエコノミスト予測の平均で21.8%のマイナスとなっています。

この予測が正しいとすると、私の計算では、現在、日本のGDPは1年前よりも8%以上減っていることになります。日本のGDPが最も減ったのは、リーマン・ショックが起きた翌年(2009年)のマイナス5.4%ですから、いまの日本経済は空前の危機に立っていることは間違いないのです。

それなのになぜ株価が上がるのでしょうか。

表面的には、株価は半年後の景気を織り込むから、投資家が半年後のV字回復を織り込み投資をしていると言えるのでしょう。

ただ、本質は2020年2月の「バブル崩壊」で痛手を負った投資家が、損失を取り返そうと、マネーゲームを繰り返しているというのが実態なのではないでしょうか。

だから私は、今後の世界経済と日本経済は、二番底に向かうのではないかと考えています。どんなバブルも実体経済を完全に無視することはできないからです。

こうした見方をしているのは、私だけではありません。実際、米国連邦準備制度理事会(FRB)が2020年5月15日に発表した「金融安定報告書」は、暴落した株式などの資産価格が再び大幅に落ち込む恐れがあると警告しているのです。

その意味では、株式投資を始めるのは、もう少し後でもよいかもしれません。

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