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日本の企業で「働かない上司」がなぜか放置される理由

石川幹人(明治大学教授)

2020年07月27日 公開 2024年12月16日 更新

日本の企業で「働かない上司」がなぜか放置される理由

《誰かに嫉妬してしまう、何にも情熱が湧かない、すぐに後悔してしまう……よくある悩みは、実はその人が悪い訳ではありません。私たちが生き残りやすいように、先史時代から受け継いだ遺伝子に問題があったのです。本来は人類の生存に有利な反応だったのですが、現代では高度に社会が発達し遺伝情報がそのまま適応できない状況なのです。

『その悩み「9割が勘違い」 科学的に不安は消せる』(KADOKAWA)の著者であり、進化心理学の第一人者である石川幹人氏が、人間に共通した人間の進化の歴史から現代人が抱える悩みを読み解きます》

※本稿は石川幹人著『その悩み「9割が勘違い」 科学的に不安は消せる』(KADOKAWA刊)より一部抜粋・編集したものです

 

なぜ上司は無能なのか?

【お悩み】うちの職場の上司は、仕事の報告をしても『うん、わかった』となま返事だけ、仕事の助言を求めても『うまくやっといて』と言うだけで、上司の役割を果たしていない。明らかにおかしいのに、誰も注意しないのはなんで?

【答え】組織の中で「裏切り者検知」と「安定志向」、二つの無意識の心の働きが渦巻いているからです。

集団としての役割を果たさない上司に憤るのは、あなたの本能の中で裏切り者を検出する心の動きが働いているのです。昔ながらの協力集団ならば当然の働きなのですが、現代社会の中で集団の性格が変わってしまっているので、状況を捉えたクールな判断が必要になります。

 

裏切り者を検知する心が生まれつき備わっている

私たちは狩猟採集時代に備わった心の動きを今でも遺伝的に引き継いでいます。協力集団を維持するためには、裏切り者やタダ乗りを見つけ出して排除する必要があります。

集団に協力しない人がいれば、その集団の存続が危うくなるからです。そうした違反者を見つけて糾弾するには、それなりの労力が必要です。労力を払ってまでも糾弾をさせるように、無意識のうちに憤りの感情を発動するのです。

例えば、ある裏切り者が、あなたに分配すべき食べ物のほんの一部をくすねたとします。そのとき、「ほんの少しだから」と放っておくでしょうか。

それとも、「何をしているの!」と糾弾し、「戦いも辞さない態度」をとるでしょうか。本当に戦いになれば、ケガをする損失は食べ物の損失を大きく上回りますので、冷静に分析すると、「放っておけ」となるでしょう。

ところが、無意識の心の動きは違います。憤りによって「戦いも辞さない態度」を誘導します。これは個人ではなく、協力集団を利する働きです。と言うのは、一人にとっては「ほんの少し」であっても、皆からくすねているとすれば大きな量になり、集団への違反行為は重大です。

自分の損失をものともせずに「憤り」を発揮させる一連の心の動きが、集団のために進化したのです。逆に言うと、誰も憤らない集団は、協力ができずに淘汰されてしまったのです。あなたが憤りを感じたことは、協力集団として心の動きが発動した自然な働きであり、肯定すべきことです。

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サイコパスは硬直化した組織の救世主

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