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「男性育休」の不安…ボーナスと昇進に悪影響はあるか? 専門家が語った“実際のところ”

天野妙

2020年10月16日 公開 2022年08月01日 更新

 

育休取得が賞与・昇進に影響するかどうかは、各企業の人事制度次第

昇進の考課は、非常に根深い問題です。ボーナスは出勤相当が支払われるケースが多いですが、昇進考課に関しては、期間中に短期間でも休業がある場合はゼロ評価(最低評価)になる企業もあるようです。

傷病で休業しているケースと同じ扱いと考えられ、過去の判例でも正当性があるとされています。また、昇進の条件として、2期連続の「A評価」が必要という企業もあります。この場合、短期間の育休取得でも大幅な昇進の遅れにつながってしまいます。

そのため、子育て世代の人材活用に積極的な企業や、両立支援に意欲的な企業では、育休取得が社員にとって不利益にならないような人事規定を採用しているケースも散見されます。

たとえば、育休を取得した社員は男女問わず「同期社員の平均点をつける」「前期と同じ評価をつける」「2カ月以内であれば、ボーナス・昇進考課に影響なしとする」といった制度です。 

今後、企業においては、ノーワーク・ノーペイの原則/他の社員との公平性の担保に留意しつつ、賞与や考課の制度を見直し、育休取得が昇進の妨げにならないようにすることが求められるでしょう。

立命館アジア太平洋大学の学長であり、元ライフネット生命会長の出口治明氏は「育児休業は留学と同じと見なし、給与は全額保証すればいい。賢くなって戻ってくるのだから。

そうすれば男女とも安心して育休が取れる」と語っています。育休取得が原因で評価を下げられ、「昇級テーブルに乗らなかった」「昇進の見込みが低い職位に降格させられた」「不本意な配置換えをされた」といったことは、意欲のあるワーキングマザーがこれまで泣き寝入りしてきたことです。男性の育休取得増加により、現行の評価制度は徐々に見直しを迫られることでしょう。

また、これから育休取得を希望する方は、取得した場合の「賞与」「昇進」の考課について、事前に人事担当者に自社の制度の詳細を確認しておくと良いでしょう。会社によっては、休業中でも「会社指定の通信教育を受けると3カ月分の在職・在級期間に算定する」など、休業期間をカバーする施策を用意しているケースもあります。

行政においては、今後男性の育休取得をより推進するために、給付金の算定根拠の基準値を月給ベースにするのではなく、賞与を含めた年収ベースにすることも検討の余地があると考えられます。

いずれにしても、まだ「男性の家庭進出」は始まったばかり。これから「家庭活躍」に向けて、他にも多くの課題が出てくることが考えられます。ついては、改善策を速やかに出し、トライ&エラーを積み重ね、労使及び行政がともにより良い制度作りを進めていくことが必要です。

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