ホーム » 趣味・教養 » “疑似科学”が世界を変える? 天才科学者が死後になって評価される理由

“疑似科学”が世界を変える? 天才科学者が死後になって評価される理由



2020年11月02日 公開

石川幹人(明治大学教授)

“科学っぽいもの”を疑似科学と呼ぶが、「超心理学」もまたそのひとつである。通常、疑似科学は胡散臭いものと扱われることが多いが、全く無視してしまうのは惜しい。なぜならそれらは、“新しい科学の始まり”かもしれないからだ。

石川氏は著書『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』にて、人が"疑似科学にハマってしまう理由"を追究している。本稿では、同書より「超心理学」を通して疑似科学との向き合い方を教示する一説を紹介する。

※本稿は石川幹人著『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』(PHP新書刊)より一部抜粋・編集したものです

 

「超心理学」の誕生

科学としての心理学は、1879年にドイツのライプチッヒ大学にヴィルヘルム・ヴントが心理学の実験室を作ったことから始まる。心霊研究協会がロンドンで設立されたのもこの頃である。

人間を科学的に究明するうえで、心理と心霊の研究は同時期に立ち上がっており、当時、両者は渾然一体となり、明確には区別されていなかった。心理学が、心霊や超能力と分かれて現代化したのは、日本に限らず全世界的な現象であった。

心霊研究は1920年までには下火になってしまうが、欧米では超能力研究として1930年代に復活するのである。これを推進したのは、アメリカのデューク大学教授、J・B・ラインである。

彼は、霊媒師を使った交霊会を実験の場にしていたそれまでの心霊研究から脱却して、大学の研究室で一般人を相手にした機械的な透視実験を研究対象とした。

この研究分野を超心理学(Parapsychology)と名づけ、透視やテレパシーなどの超能力をESP(Extra-Sensory Perception「感覚器官以外の知覚」という意味)と定義して、精力的な研究を展開した。

なかでも○、□、☆、十字、波形の5種類の記号を印刷したESPカードを作成し、短時間に透視やテレパシーの課題を何百回も行う方法を開発した点が評価される。

その簡便な研究方法が、欧米で広く採用され、たくさんの論文が発表された。ラインは発表の場として1937年に『超心理学論文誌 Journal of Parapsychology』の発刊を始めた。

また、1957年には超心理学協会 Parapsychological Associationという研究者団体が発足し、1969年にはアメリカの科学振興協会に学術団体として認定されている。

この『超心理学論文誌』は現在でも引き続き刊行が続いており、超心理学協会もまた、毎年国際会議を開催している。ロンドンの心霊研究協会は、名称こそ昔のままだが、今では実質上、超心理学の研究を行っている。

社会的な体制を見る限り超心理学は、れっきとした科学のように見える。これを例題にして、科学と疑似科学を見分ける基準について考えてみよう。

 

超心理学は科学か

このような発展をとげている超心理学は科学なのか、それとも疑似科学なのか。もし超心理学が疑似科学だとすると、超心理学よりも厳密性に欠ける心理学分野が少なくないため、それらはみな疑似科学だということになる。

かといって超心理学を科学とするには、いくつか問題もある。そういうわけで、超心理学が科学と疑似科学のあいだのグレーゾーンに位置するのは間違いない。

では、このグレーゾーンの判別にはどういった方法があるのだろうか。超心理学の実験は、思い込みや誤りが入らないように厳密に企画され、客観的なデータが得られている。

また、その結果は、統計的な分析によって、一定の再現性が得られている。こうした研究発表の場は、学会や論文誌のかたちで社会にオープンになっており、超心理学はオカルトである、と退けることもできない。

また100年近い研究の積み重ねと、懐疑論者を交えた議論の蓄積もあり、他の心理学分野に比べて、こうした検討の歴史もかなり充実している。しかし一方で、超心理学には確固たる理論がない。

一部、外向的な性格の者はESPを発揮しやすいとか、夢に似た意識状態のときにESPが起きやすいとか、周りの人々から受容される状況においてESP現象が出やすいなど、ESPと相関関係のある心理・社会的条件はいくつか判明している。

ところがそれ以上の、因果関係を説明する物理的メカニズムや、次はこのような実験をすると究明が進むといった「ESP発揮のモデル」が提案できていない。

「科学革命は魅力的な理論で進む」と述べたが、超心理学には、革命を起こすような理論がいまだ見つかっていない。超心理学は科学的な方法にのっとって研究が進められており、その意味では科学であるが、確固たる理論がない段階にとどまっている。

そのため、将来科学になる可能性のある未科学(未完成の科学)であるといえるだろう。ただし、ESP効果の大きさは非常に小さく、今のところ日常生活の役には立たない。

かりに、ある占い師にESP能力があるとしても、ESPで占いが当たる確率はきわめて低く、占いの精度に目立った改善はない。だから、ESPをうたったビジネスがあったのならば、それは疑似科学だろう。

次のページ
超心理学は「心霊現象」ではない >



関連記事

編集部のおすすめ

学生時代にいなかった「嫌な人」が、社会に出ると増えるのはなぜか?

前野隆司(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)

日本の企業で「働かない上司」がなぜか放置される理由

石川幹人(明治大学教授)

子どもの学力を左右してしまう、親の経済力とは別の「重要な要素」

中野信子(脳科学者)、鬼塚忠(作家エージェンシー代表)

日本最大級の癒しイベント出展社募集中

WEB特別企画<PR>

アクセスランキング

WEB特別企画<PR>

日本最大級の癒しイベント出展社募集中
  • Facebookでシェアする
  • Twitterでシェアする

ホーム » 趣味・教養 » “疑似科学”が世界を変える? 天才科学者が死後になって評価される理由

×