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明智光秀が読んでいた「三冊の本」の重要な意味…『麒麟がくる』がさりげなく伝えること

前田慶次(名古屋おもてなし武将隊)

2020年11月07日 公開 2022年06月30日 更新

 

天皇と幕府と大名、三つ巴の争い

正親町(おおぎまち)天皇は、財政が厳しい朝廷を立て直そうとした天皇。自らの即位も金が足りず、戦国大名の力を借りて朝廷の威光を取り戻そうとする。

そんな時に信長と出会う。官位の身分的に、信長はまだ参内ができる立ち場の人間ではない。そのことを衣装とナレーションで、視聴者にわかりやすく案内していた。

正親町天皇は、信長と持ちつ持たれつな関係を築いていく。「勅命(ちょくめい)」という、帝の命令を使用する事で他大名に牽制を仕掛ける信長。同時に幕府も動かそうとする。これに幕府側が反発する。

足利義昭がというより、摂津を始めとする幕府の側近が良く思わなかった、という表現でドラマでも描かれておった。大名と幕府と朝廷の三つが、それぞれを利用しようとする中で抜きん出たのが信長。時代を変える革命とも言える行動力があった。

後に、正親町天皇は「征夷大将軍やら太政大臣、関白」のいずれかに信長を任命しよう考えるが本能寺の変が起きてしまう。ドラマでは、承認欲求が強い信長は帝に認められ、内裏の屋根まで直してしまう。母、帰蝶、光秀、帝と信長の求める欲は高まるばかり。さて、この先はどうなっていくのであろうか。

 

若狭武田家と明智光秀の深い関係

元を辿ると若狭武田家は甲斐武田家と同族!つまり武田信玄の一族である。若狭武田家は朝倉家に従属している。

ここで肝になるのが光秀の母、お牧の方は若狭武田家の血筋であるということ。ドラマとして、何かしらの描かれるかもしれん。今回、「武藤なにがし」という名前が出てきたが、なにがしは「なんちゃらかんちゃら」という表現で要は名前が分かっていない。

この武藤なにがし、武藤友益(むとうともます)と申して、若狭武田家の重臣として織田軍に抵抗していた。そのため、朝廷の勅命を得て信長は若狭武田家を攻める。大義名分と言う盾を作って、朝倉義景を討とうと考えたのだ。

信長は「幕府、諸大名皆で出陣!」と号令を出すが、幕府の側近たちは従わぬ状況。その状況を摂津が語るが光秀は一言も言葉を出さず、顔の表情のみで伝える。これは此度のドラマの名場面であったな。

 

9年ぶりに登場した帰蝶の変化

再登場の帰蝶は9年振りということで、衣装も変化。ドラマの見所の一つでもある衣装。衣装担当が、それぞれの人物の感情や立場を衣装を使って表現をする。久々の帰蝶は他登場人物同様、心情の変化によって衣装も大きな変化が見れてとれた。

以前は白を基調に光秀色の青色も多く使われ、明智家の人間であった事と光秀への想いも見て取れた。

此度の登場では織田色の黄色だけでなく、暖色を多く散りばめた派手な着物であった。帰蝶の名の通り蝶柄を取り入れ、日ノ本が南蛮との貿易を始め安土桃山時代が近づいておる事を伝える。

武将だけでなく、奥方である女子が世の状況を表現できるというのは、織田家が如何に強い組織であることを表している。

 

金ヶ崎の戦い、姉川の戦い…合戦の予感

さぁ此度は如何であったか? 次回予告で、光秀が「信長を死なせてはならん!」と言うておるが「あんたが言うか」と皆も突っこんだはず。

ドラマオリジナルキャラクターの人脈に驚かされ続ける『麒麟がくる』、今回は足利義昭と駒が密会をした。この先、この関係性をどう回収するのか見物である。

次回は遂に合戦場面となる。激しい金ヶ崎の戦いや姉川の戦いに注目じゃ。第31回「逃げよ信長」も楽しんで参ろうぞ。

(参考文献)
大河ドラマガイド 麒麟がくる後編(NHK大河ドラマ・ガイド)
『信長公記』
『完訳フロイス日本史』(中公文庫)
『武将メシ』永山久夫著 (宝島社)
「麒麟がくる」ホームページ

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