「疲れがとれない」と感じて、がんが見つかったケースも
なかなか疲れがとれず、検査を受けたところ、がんが見つかったということがあります。がんが発見された人の多くが、「そういえば、ここのところずっと疲れていた」と気づきます。
一方で、悪い疲れをつくり出すような思考や生活が、がんの遺伝子を目覚めさせてしまうこともあります。がんは、がん遺伝子の目覚めによって起こってきます。
日本でも血液検査を主流とした数多くの遺伝子検査が行われています。多いのは、「後天的」なDNAの変異を調べるための遺伝子検査です。
DNAは「親から受け継いだ先天的なもの」ですが、がんの発症は先天的な遺伝だけが原因とは限りません。むしろ、加齢や生活習慣などによってDNAが傷つき、がん遺伝子が目覚めてしまって起こってくる後天的なケースのほうがよほど多いのです。
実は、病気のほとんどは、その病気の遺伝子を、悪しき環境が目覚めさせることで起こってきます。たとえば、近年多くなっている大腸がんは、食物繊維の摂取量の減少によって腸内環境が悪化することが大きな原因になっています。
食物繊維の摂取量が不足すると、腸内の悪玉菌が発がん性物質をつくり出すようになります。それが大腸の細胞のがん遺伝子を目覚めさせるのです。
しかも、悪玉菌がつくり出した発がん性物質が体内に吸収され、血液中に流されていけば、他の臓器のがん遺伝子を目覚めさせるリスクも高まることになります。
また、人の思考が、がん遺伝子の発現に働くこともあります。思考がネガティブになっているときほど、ストレスを負いやすく、それを増幅させやすくなりますし、自律神経も乱れます。それが血液の状態を悪くして体内環境を悪化させ、がん遺伝子を目覚めさせるリスクを高めてしまうのです。
「悪い疲れ」が2週間続いたら、病気を疑ってみる
悪い疲れが病気を引き起こす一方で、病気が悪い疲れを起こしていることもあります。とくに50代を過ぎて、2週間以上続けて疲労を感じるようなら、一度診察を受けてみるとよいでしょう。
心臓や肺、腸、腎臓、脳など、いずれの部位に病気が起こっても、真っ先に現れる症状が「疲労感」だからです。以前、長引く疲れを訴えて受診された患者さんに、多発性骨髄腫が見つかったことがあります。
この病気は血液のがんです。進行すれば、骨が破壊され、痛みや骨折などが起ってきますし、腎障害や貧血なども生じます。この病気も、最初に現れる症状が、疲れやだるさ、息切れなどです。
肝臓に病気が起こっていたケースもあります。肝臓は、身体に必要なさまざまな物質をつくる一方、老廃物や有害物質を解毒・排泄するという働きがあります。
ただ、病気が起こって機能が低下していても、症状が現れにくい臓器です。そのため、「沈黙の臓器」とも呼ばれています。この場合も、多くの患者さんは疲れを真っ先に感じています。
とはいえ、「たかが疲れくらいで受診してよいのだろうか」と感じる人は多いかもしれません。繰り返しますが、50代を過ぎて起こるあらゆる病気は、最初に疲労感があるということ。これはぜひ覚えておいていただきたいことです。
もし、睡眠をとっても疲れが長く続く場合は、「2週間」を一つの目安に受診を考えるとよいと思います。それによって、身体に何も問題がないと分かれば、自律神経が乱れている段階と分かります。それならば、その改善に全力を注げばよいのです。
反対に、疲れを長く感じながら放置し、必要な治療が後手に回ってしまったとしたら、「身体の変化に気づいていたのに」と深く後悔することになるでしょう。