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「自分に自信が持てない人」ほど他人を束縛したがる“負の連鎖”

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2021年01月27日 公開 2023年07月26日 更新

「自分に自信が持てない人」ほど他人を束縛したがる“負の連鎖”

他者や過去に対して“束縛する人”は、長いあいだ社会人生活を送る中で、一度は出会う“迷惑”な人の一種ではないだろうか。こうした人は自然の変化にさからうことで、ストレスが増し、それがさらに内面の憎しみと恐怖を増大させる、と加藤諦三氏は指摘している。

加藤氏の著書『「自身が持てない人」の心理学』では、心に何らかの問題を抱える人が、過去に経験してきた環境やトラウマについて解説している。本稿では、束縛をしてくる人が恐れる「変化」に関する一説を紹介する。

※本稿は、加藤諦三氏(著)『「自信が持てない人」の心理学』(PHP研究所)より、一部抜粋・編集したものです。

 

自然の流れにさからうと、ストレスは増大する

自分を束縛することなしに、他人を束縛することはできない。つまり他人を束縛する者は、実は自分の精神をも萎縮させているのである。

恋愛をして恋人を独占欲から縛りつける人がいる。あれもしてはいけない、これもしてはいけない、あの人とも会ってはいけない、この人と会ってもいけない、と。

しかし、こうして相手を束縛することで、この人は自分自身を束縛してしまうのである。自分をどんどん受け身の人間にしていってしまう。そして、より嫉妬深くなり、体の調子も悪くなる。食欲もなくなり、運動しようという気にもならない。

自分の関係者を自由にしてあげることで、実は自分自身が自由になっていくのである。恋愛だって、親子関係だって、同じである。子供を縛りつける親がいる。子供が積極的に成長することを喜ばない親がいる。

いつまでも子供が自分から離れないことを心の底では願っている。そして、いつまでも独り立ちできず、自分に従順であることを心の底で喜ぶ親がいる。そのように他人を束縛することで、実は自分にストレスを課していることに、その人は気づかない。

変化こそ自然なのである。その自然の流れにさからうことで、ストレスは生まれる。現在にしがみつくことで、ストレスは生まれる。

現在の地位に、現在の財産に、現在得ている名声に、それらにしがみつくことで、ストレスは生まれる。

現在の立場が自分にふさわしくなくなれば、その地位をしりぞくのがよい。それが新しい立場を獲得する方法である。なんと多くの人が、現在の財産にしがみつくことで、多くのものを失ったことだろう。

 

変化は心理的安定を乱すが、変化こそが「自然」

ゲバラは、キューバ工業相の地位をうち捨ててボリビアに渡って、ゲリラ活動を指導したのであった。政府軍にとらえられても、彼は確実な幸福を味わっていた、と私は信じている。

人間の心理的安定にとって、変化は危険である。しかし、変化は自然の流れなのである。昨日のあなたは、今日のあなたではない。今日の私は、明日の私ではない。自分の変化、自分の回りの変化、それを押しとどめようとすればストレスが高まり、時には病気になる。

何だか調子が悪いという時、自然の流れにさからっているのである。自分の回りのものを何もかも独占し、自分の都合のよいように動かそうとすれば、ストレスが高まるのは当然である。

あるものを独占しようとする人は、そのものに憎しみと恐怖をいだいている場合が多い。自然の流れ、自然の変化に身をまかせられないのは、自分の内面が憎しみと恐怖に占領されているからである。

自分の内面が憎しみと恐怖に満ちている親は、時間の経過とともに親子関係が変わることを受けいれられない。子供が10歳になっても、20歳になっても、3歳の時と同じ関係を保とうとする。自然の変化にさからうことで、ストレスが増し、それがさらに内面の憎しみと恐怖を増大させる。

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他人を束縛すること=自分を束縛すること

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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