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足利義昭の「裸足」にも深い意味が? 大河『麒麟がくる』が描く“貧乏公方の悲哀”

前田慶次(名古屋おもてなし武将隊)

2020年12月26日 公開 2022年06月30日 更新

 

改元! 遂に時代は天正へ

世に対して分かり易く時代の変化を伝える手段が改元であった。室町幕府の終わりを告げる天正へと、信長は帝の力を得て改元する。

改元の言上を進言したのは、義昭を追放してわずか3日後であった。織田政権の始まりを意味した。

以前に「元亀という元号を変えるべきでは?」と朝廷から話が出ており、義昭はそれに反発していた。信長は17カ条の異見書でも、それについて突っ込んでいた。故に朝廷からすれば、今回の天正への改元は願ったり叶ったりであったやもしれん。

 

安土桃山時代を伝える明智光秀の袴姿

一乗谷城攻め、小谷城攻めで反信長勢は壊滅した。織田家の中にも、緩やかな空気が流れた。今井宗久が朝倉家の品々を品定めしていた。この時に、視聴者皆が光秀の見た目が変わった!と感じたはず。

髷は茶筅髷(ちゃせんまげ)となり、衣は裃(かみしも)となった。これ迄は現世で申す所の制服とも呼べる「直垂(ひたたれ)」が中心であった。

裃は小袖の上に、袖口を無くした動きやすさを重視した着物である。此れは安土桃山時代以前より存在するが、重要なのは裃=織田信長という印象が強いということじゃ。織田信長の肖像画で最も有名なものが裃である。

裃を見れば、「あ!信長が着ているやつだ!」と視聴者は理解しやすい。つまり、信長を象徴する袴姿は、新時代である安土桃山時代を一目で視聴者に伝える演出方法である。また、茶器等の品定めをしている場面を描き、茶の湯御政道を掲げた信長の新たな価値観をドラマで見事に表現した!

 

蘭奢待(らんじゃたい)とは? 権力者の象徴を表した香木

信長が蘭奢待を切り取った。視聴すれば、如何にすごいものなのかは分かったと思う。かつての将軍、藤原、源の方々に加え、後には天皇も切り取った蘭奢待は香木である。

蘭奢待は50回以上切り取られ、箇所は38か所とも言われる。一部を帝に献上した信長であったが、帝は毛利輝元(元就の孫)に下賜した。それは厳島神社に奉納されたそうじゃ。

残りの蘭奢待は信長が城に持ち帰り、家臣達に「末代までの物語となろう、見るが良い」と披露した。蘭奢待を目にし、切り取った事実は、諸大名に伝わり、信長が武家政権の確固たる地位を築いた証となった。

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