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諸説ある織田信長と正親町天皇の関係…大河『麒麟がくる』はどう描いたか?

前田慶次(名古屋おもてなし武将隊)

2021年01月23日 公開 2022年06月30日 更新

 

天皇譲位問題と本能寺黒幕説の繋がり

正親町天皇に譲位させようと信長が動き出したのは、随分前からで1573年頃からとも言われている。

信長からすると、己を慕っている誠仁親王を日ノ本の頂点「天皇」に据える事できれば、自分が動きやすくなるので利点しかなかった。故に譲位を急かしたわけじゃ!

ドラマでも、この模様を描いていた。しかしながら、現実に譲位をするためには儀式を行う必要があり、執り行う御所が無かった。正親町天皇自身も譲位を反対し続けた様じゃ。

色々な説がある正親町天皇の譲位。ドラマでは信長が譲位を促す説を取り入れた。本能寺の変の正親町天皇黒幕説を匂わす為に、光秀にも天皇が近づいて囁く演出となっていた。

 

一番の名場面!月に住む住人、「桂男」は誰?

「王維」の漢詩「送別」を光秀が読みふけっていた。この歌は「これからどこへ行く?思い通りにならなければ故郷に帰って隠居する」といった内容。愛する室である、煕子を失い戦に明け暮れる日々に心身共に疲れ切っていた光秀の心情が見て取れる。

一つの前の場面では、信長に平蜘蛛を献上する手に汗握る名場面があった。一度偽った経緯を考えれば、平蜘蛛を差し出すのは「何かしらの罰がある」と誰もが容易に想像できる。

それを受け入れる“覚悟”を示した光秀であったが、信長にその“覚悟”という概念は無かった。正に精神的にも悩ましい場面を歌に込めた。

そして、今回一番の見所であり唸った場面、正親町天皇と光秀の密会。天皇から「月には奇妙な男が住んでおる」と言われ、光秀は「桂男」と答える。桂男とは中国の神話に出てくる月に住む住人のこと。この桂男が何を示すか。

桂男=月の神。死が付きまとう男である。多くの者はドラマを見ている限り、信長が桂男と思うたであろう。儂は否と考える。

桂男は正親町天皇、自身の事を指していると考える。「登る者を多く見てきた」。これは月に閉じ込められた桂男の目線である。そして桂男の話では、桂男に誘われた者は命を落とす、と伝えられている。

故に桂男=信長ではなく天皇である。天皇が尾張の大名信長を誘い出し、天(月)まで昇って来いと誘う。信長は天に昇る為の「安土城」を築城する。ドラマの中でも「安土城を天にも昇る」と丁寧に説明台詞として案内していた。

譲位で天(月)から桂男をどかして、自らが桂男になろうとしている! と表現した。此度、光秀も桂男の天皇に誘われてしまう。これこそが、朝廷黒幕説への分かり易い前振りであり光秀の命の灯が消えかかり始める合図であった。

光秀は天(天皇)を守るべく命を落とし、桂男に誘われた信長は登り切れず命を落とす。まさに此度の題目「月にのぼる者」、月に導かれる者達の今後を決める大事な放送回であった!

前回の放送で煕子と光秀が坂本城天主にて「桂男」の歌について「月は船、星は白波、雲は海。一体どうやって漕いでいるのだろう。」と語っていた。

煕子もまた桂男ではないのかと考える。先に天に昇った煕子は、どうやって船を動かすのか。光秀が来るのを待っているともとれる。つまり、煕子が先に命を落とす意味を表現していたのじゃ。誠に天晴な演出である。

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“最後”へ向けて動き出す

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