結果的に偽装行為に? 企業が注意すべき「SDGsウォッシュ」の罠
2021年01月28日 公開 2022年10月20日 更新
いまや広く知られた考え方であるSDGs。利益を追求し自社の経済的価値を高めていく。そんな企業のあり方に、早急な変化が求められている。
CSR(企業の社会的責任)エバンジェリストの泉貴嗣氏は、新著『やるべきことがすぐわかる! SDGs実践入門~中小企業経営者&担当者が知っておくべき85の原則』(技術評論社)の中で、SDGsの具体的な実践方法やよくある誤解について解説している。
本稿では同書より、SDGs対応をアピールしても実態が伴っていない、「SDGsウォッシュ」の見極め方について語った一節を紹介する。
「SDGsウォッシュ」を予防する
SDGsは官民の双方で推進している一種の社会運動です。しかし、参加企業の中には、取り組んでいないSDGsの推進を偽装して企業イメージを高めようとする、詐欺的な企業も存在します。
このような詐欺的な行為を「SDGsウォッシュ(ウォッシュ=washing:塗りつぶす)」と呼びます。
SDGsウォッシュは、SDGsに取り組む上での最大のリスクです。発覚すれば、自社の社会的信用や顧客を失う重大なリスクとなります。そこで、次の3つの視点から自社のSDGsのあり方をチェックし、予防に努めましょう。
(1)取り組みがESG問題に有効で、かつ現在進行形か?
(2)取り組みを記録によって説明できるか?
(3)取り組みが相互連関的か?
「ESG 問題」とは、ビジネスの制約要因となる、自然災害を含む環境問題(Environment)、社会問題(Social)、組織統治問題(Governance)の頭文字を取って総称したものです。SDGsはESG問題を解決するための考え方です。
そのため、ESG問題に有効ではない、あるいは現在はもう行っていない過去の取り組みを発信しても、現実のESG問題の解決には貢献しません(1)。
また、根拠となる記録を欠いたSDGsの情報発信は、取り組みの偽装を疑われ、ステークホルダーの不信を買います。そのため、記録による説明が重要になります(2)。
最後に、ビジネスがESG問題の解決に寄与するマルチベネフィットにならなければ、それは単なる「カネ儲け」の域を出ません(3)。
SDGsウォッシュはステークホルダーへの背信、経営資源の浪費の原因となるものです。企業は安易にSDGsに便乗するのではなく、着実な実績と、適切な発信の両立を図ることが求められます。
自社の取り組みを正しく把握しているか?
自社のSDGsへの取り組みがSDGsウォッシュ化するリスクは、自社の日頃の活動に注意を払うことで予防できます。
そのためには、役員や従業員個人の自発性に委ねるのではなく、組織として取り組まなければなりません。最初に行うべきは、社内のESG問題の抑制です。抑制には、次の4つの方法を組み合わせることが効果的です。
(1)ESG問題への取り組みをルール化する
(2)定期的にルールを発信・周知する
(3)定期的にルールの運用状況をモニタリングする
(4)ルールの運用に関する従業員の相談窓口を開設・運用する
社内のESG問題には不法投棄や労災隠しのように法令ではっきりと禁止されているものと、各種ハラスメント対策やエコ運転の実施など、法令の適用が不充分だったり、義務化されていなかったりするものがあります。
前者にしっかり取り組むとともに、後者については(1)によって、ESG問題の実効的な抑制に取り組む必要があります。
そして、作られたルールはメンバーの入れ替わりや時間の経過とともに形骸化する可能性があるため、研修や社内報などを利用して(2)に取り組むことも重要です。
また、ルールは運用することによって、実際のESG問題の抑制に貢献します。そのため、レポートによる報告などの形で(3)を行い、運用状況を把握しましょう。
最後に、ESG問題の抑制には従業員の協力が不可欠です。彼らの協力を引き出すためにも、弁護士などの専門家のアドバイスを参考に従業員のプライバシーや処遇に配慮しながら、(4)によるESG問題の探知に取り組みましょう。