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結果的に偽装行為に? 企業が注意すべき「SDGsウォッシュ」の罠

泉貴嗣(CSRエバンジェリスト)

2021年01月28日 公開 2022年10月20日 更新

 

理念と行動は一致しているか?

SDGsウォッシュを回避するためには、社内のESG問題を抑制して社会に迷惑をかけないだけでなく、社会から信頼されるための行動を積み重ねる必要があります。

そのためには、企業理念の実現に向けた行動を実践し、この理念に反する行為を予防することが必要です。この予防のためにチェックすべきなのが、次のポイントです。

(1)自社の経営状況と市況を顧みない経営目標・KPIを設定していないか?
(2)取引相手の毎回の取引時の利益に配慮しているか?
(3)企業理念の実践方法を従業員と共有できているか?

(1)を無視すると、現場に無理なノルマなどの形でしわ寄せが行きます。無理なノルマは、不誠実な営業活動や手抜き作業といった企業理念に反する行為を誘発します。これを予防するためには、適切な目標設定とその進捗管理が不可欠です。

あらゆるビジネスは、ステークホルダーとのパートナーシップが前提です。これは搾取する/される関係ではなく、互恵的な関係を意味します。

それ故(2)を無視すれば、企業理念の前提を損なうことになります。持続可能なパートナーシップのためにも、利益とリスクを分かち合う適正な価格交渉を行う必要があります。

そして、企業理念は活用するためにあるのであって、掲げておけばよいというものではありません。そこで(3)をチェックして従業員と議論を重ね、理念の実現に向けた行動を実践するための環境を整える必要があります。

立派な企業理念があっても実際の行動が理念に反していれば、SDGsウォッシュのリスクを高めます。経営者は、理念の実践のための環境整備が自らの職責であることを常に意識する必要があります。

 

「ESG問題への取り組み」を人事評価に反映する

SDGsの実践は、従業員の積極的な参加なくして成り立ちません。SDGsに真剣に取り組むためには、従業員がESG問題に関心を持ち、積極的に取り組みたくなるような環境整備が不可欠です。

この環境整備でもっとも重要なのは、SDGsに関連した取り組みを人事評価の対象にすることで、従業員の積極的な取り組みを促進することです。そのために必要なポイントは、次の2つです。

(1)経営計画などにある、既定のESG問題への取り組み状況を人事評価の対象とする
(2)経営計画などにない、ESG問題の解決に有効な業務上の提案を人事評価の対象とする

やる気を引き出すために最初に行うべきは(1)です。経営計画などに具体的なSDGsの推進が織り込まれていることを前提に、経営計画にリンクするESG問題への取り組み目標を従業員と共に設定し、その取り組み状況を評価します。

また、自社が計画した事項だけに評価対象を限定するのは、自社の新しいチャンスや潜在的な問題の発見、従業員の能力向上にプラスになりません。そのため、(2)によって従業員のさらなるやる気を引き出しましょう。

SDGsのかけ声だけが勇ましくても、従業員の積極的な参加がなければ取り組みは形骸化し、SDGsウォッシュのリスクが高まります。従業員の積極的な参加を促すために人事評価を見直すことは、SDGsのリスク予防に欠かせない取り組みです。

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「取引先のESG問題」に注意を払う

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