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無理なく「続ける」ための心理テクニック

池田義博(記憶力のグランドマスター)

2021年03月04日 公開 2022年10月17日 更新

無理なく「続ける」ための心理テクニック

自分にとって読む価値があると思える本に出会えたとします。その本を読むことが間違いなく自分のためになることが頭では分かっていても、しばらく読み進めるうちにいつの間にか読むのを中断してしまった……。誰もがそんな経験があるのではないでしょうか。

意志力はあてにはなりません。それは脳の構造からそうできているのです。そうではなく、脳に"条件"を与えるとうまくいきます――『一度読むだけで忘れない読書術』を上梓した世界記憶力グランドマスターの称号を持つ池田義博氏はいう。日本記憶力選手権で6年連続日本一にも輝いた同氏に脳の原理に沿った本当に正しい読書を教えてもらった。

※本稿は池田義博著『一度読むだけで忘れない読書術』(SBクリエイティブ)より一部抜粋・編集したものです。

 

なぜ「継続」は難しいのか?

読書に限らず、一度やる、と決めたことを途中で諦めてしまうという経験を持つ人は割と多いのかもしれません。

それにはいろいろな原因が考えられますが、いわゆる「習慣化」を妨げる大きな要因の一つとして、例えば読書であれば、どこか自分の中に本を読むのがおっくうな自分がいて、ついつい読むことを避けてしまうということがあります。

最初はそんなささいなことが、度重なるうちにいつの間にか気づくと読みかけのままほったらかしという状態を招いてしまうというわけです。その本の内容が難しかったり、ページ数が膨大な本であったりすればなおさらそこに意識が向かないということもあるでしょう。

しかし少なくとも、初期の段階で「読むのをやめてしまった」ということをなくすだけでも、習慣化にはかなりの効果があります。これを防止して習慣をキープさせる方法をここでは紹介します。

 

「条件付きの計画」を立てると実行する確率は2倍以上に

ドイツの心理学者、ピーター・ゴルヴィツァー教授が実験の結果から生み出した習慣化のための方策があるのです。その名を「条件型計画」といいます。この方法のすごいところは自分の意志力に頼らなくてもよい、というところにあります。

人の意志力というのは一日の中で消耗していくということが研究の結果分かっています。一日の中で判断をしなければならない機会や相手に対する振る舞いといった行動のたびに意志力というものは消耗していくのだそうです。

つまりそもそも何かを習慣化するときには自分の意志力はあまり頼りにしない方が得策ということです。

それに対しこの「条件型計画」はほとんど意志力に頼らなくても大丈夫な工夫がされています。その工夫とは心理学的効果の「プライミング」を利用することです。プライミングとは事前に何度も接した情報や事前に考えた情報が後の行動を促進させるという現象のことです。

このプライミングの効果が組み込まれている方法なのです。具体的なやり方は至って簡単です。「(もし)〜という条件なら、(そのときは)〜という行動をとる」というような条件付きの計画を立てるだけです。

「もし〜なら」という条件がプライミングの効果を発動させる仕組みになっているのです。そしてさらに「〜ならば〜する」という文法の形は脳に強く訴えかける作用もあるのです。

実験によるとこのような実験型計画を設定するだけでその条件に接したときに意識が行動するように促されて、決めた目標が実行できる確率は2〜3倍になるということです。

運動の習慣をつけたかったら、「(もし)金曜日に仕事が終わったら、(そのときは)ジムに行きトレーニングする」英語の勉強だったら、「(もし)寝る1時間前になったら、(そのときは)英単語を20個覚える」といった具合です。

だから読書をするときも、「(もし)会社から帰ったら、(そのときは)1時間読書をする」とか、「(もし)電車で移動するなら、(そのときは)読書の時間に充てる」などの条件付きの計画を設定しておけばよいわけです。

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