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文章のプロがこっそり明かす…「短くて伝わる文章」をつくるテクニック

水島なぎ(ライター・編集者)

2021年05月20日 公開 2021年07月12日 更新

 

長い修飾語は「指示語で割る」

一文中にたくさんの情報を盛り込もうとすると、修飾語が増えてしまいます。1つの名詞にかかる修飾語が多すぎると、文章が無制限に長くなるのです。丁寧に解説しようとして修飾語が増え、主語や目的語が長くなってしまうパターンです。

「本当にこの修飾語は必要か?」と考えるのも大切ですが、一方で、削りすぎると情報が不足してしまうおそれもあります。

そこでおすすめしたいのが、指示語を使って長い修飾語を凝縮するテクニックです。一文ずつ情報を整理して、わかりやすい文章にできるのでぜひ試してください。さっそく例文を見てみましょう。ホームページやDM、チラシなどに使われる商品紹介文です。

×:弊社が開発した校正支援ツールに付属している表記の揺れをピックアップして指摘する機能を利用することで、記事内で用字用語を統一しやすくなり、文章の質の向上につながります。

〇:弊社が開発した校正支援ツールには、表記の揺れをピックアップして指摘する機能が付属しています。【この】機能を利用することで、記事内で用字用語を統一しやすくなり、文章の質の向上につながります。

もとの例文は83文字もあります。とあるツールの機能についての解説ですが、「弊社が……指摘する」までが、目的語である「機能」にかかっています。修飾語が複雑にかかりあい、長い修飾語になってしまっているのです。機能の紹介とツールを使用するメリットを、一文で説明しようとしたのが原因です。

そこで、改善案では一文一義になるように、機能を紹介する前半とメリットを説明する後半で文章を割りました。割った文章をつないでくれるのが、指示語です。

語順を入れ替え、「~機能が付属しています」を文末にもってくることで、一度文章を区切ります。その後に、指示語を使って「この機能を」と受け止めてから、次の文章を始めています。

こうして、83文字だった文章を46文字と46文字に割ることができました。仮に、改善案のようにトータルの文字数が増えたとしても、一文一義にしたほうが意味は伝わりやすくなります。

 

「私は」の代わりに指示語

文章の書き出しは、魅力的なほうがいい……とわかっていても、つい「私は~」のようなありきたりな主語で書き始めてしまいがち。シンプルな主語自体は悪くありませんが、同じ書き出しが続くと平凡な印象を与え、読み手にも飽きられやすくなります。そんなときは、主題を先に出しましょう。

ダラダラと修飾語を連ねて細部を説明するよりも、先に端的な結論を出してあげるのです。文章の順番を入れ替えて主題をド頭に出し、指示語を使ってそれを受け止めてから、次の文章で細部を説明するのがおすすめです。作家への取材記事を想定した例文をご覧ください。

×:私は小説を書くうえで、物語の序盤では登場人物を未熟な状態で描き、中盤でいくつかの試練を与えて、終盤で登場人物が何かひとつでもいいから成長することを、大切にしています。

〇:小説を書くうえで私が大切にしていること。【それは】、「登場人物の成長」です。物語の序盤では登場人物を未熟な状態で描き、中盤でいくつかの試練を与えて、終盤で何かひとつでもいいから成長させるようにしています。

読み手は文章を最後まで読んで初めて「ああ、大切にしていることが何なのかを説明した文章なんだな」とわかります。読み手は文章の着地点を把握しないまま、83文字も旅をする羽目になるのです。

主題が「大切にしていることは何か」だとわかった頃には、途中にあった「序盤ではこうして中盤ではこうして……」が示す細部は頭に残っていません。

これではまるで、取材音源から文字起こししたものを整文しただけ、という感じです。文章がダラダラと長く続いているのは、話し言葉の影響でしょう。

改善案では、記事としての読みやすさを重視する方針にもとづき、文意を変えない範囲で編集を加えました。やり方はいろいろありますが、「主題を際立たせる」ように編集しています。

まずド頭に主題を出します。次に、主題を指示語で受け止めて、結論を書きます。その後に細部を続ければ、読み手に最後まで読んでもらいやすくなります。

「私は」というありきたりな主語から始まり、ダラダラと83文字も続く例文と比べて、かなりわかりやすくなりました。文章のボリュームも、20文字、16文字、64文字とメリハリがあります。「今からこれについて説明するよ」と予告すれば、長い文章も頭に入りやすくなります。

ただし、指示語の多用は禁物です。「これ・それ・あれ」などの指示語だらけの文章は、かえってわかりにくくなる場合もあるからです。指示語を使うときは、1段落に1つが目安です。

また、指示語は距離を離さず、凝縮したい文章の直後に置きましょう。そうすれば、何を指しているのか迷子にならずに済みます。

 

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