1. PHPオンライン
  2. 生き方
  3. 手に負えない「すぐ怒り出す夫」が気づけない“たった一つの感情”

生き方

手に負えない「すぐ怒り出す夫」が気づけない“たった一つの感情”

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2021年09月16日 公開 2024年12月16日 更新

手に負えない「すぐ怒り出す夫」が気づけない“たった一つの感情”

些細なことですぐに怒ってくる人がいるのは何故か。それは、その人の無意識にある不安が原因であると、早稲田大学名誉教授の加藤諦三氏は指摘する。

加藤氏は著書『誰にもわかってもらえない不安のしずめ方』にて、不安に苦しんでいる人は隠された敵意を抱いていると語る。普通に話しかける妻に対して、すぐに怒ってしまう夫の例をもとに解説していく。

※本稿は、加藤諦三 著『誰にもわかってもらえない不安のしずめ方』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

すぐに怒り出す夫の謎を解く

無意識を理解することは、我々が充実した人生を送っていく上で、絶対に欠かせないものです。

自分とは何か?自分の意識と無意識とは何か?自分の無意識にあるのは何なのか?不安の本質は?というように、まず不安の心理の範囲と深さがもたらす影響の恐ろしさを理解しなければなりません。

不安は、軽い不安から深刻な不安まで様々です。不安の症状が、我々にとっていかに広範で深刻なものであるか、マズローは「完全な矛盾」(『完全なる人間──魂のめざすもの』マスロー〈著〉、上田吉一〈訳〉、誠信書房)という言葉を使っていますが、内容は社会的正常性と、心理的正常性が矛盾するということです。

相談者からよく聞く話で「夫と話ができません」という相談があります。悩みを聞いてみると「そんなの夫と話をすれば、すぐ解決するのではないか」というような内容です。ところが「いや、それが先生、夫と話ができないのです」と食い下がります。

「なぜですか」とたずねると、「何か言うとすぐに怒り出すので、話ができないのです」という答えが返ってきます。

この怒り出す原因は、ささいなこと、どうでもいいことだといいます。

例えば、妻の返事の仕方、会社から帰宅した時の出迎え方というように、給料が下がった、新型コロナウイルスで東京が封鎖されたというような話と比べると、たいした問題ではありません。

にもかかわらず、そんなことで猛烈に怒り出すというのは、それは返事の仕方の問題ではありません。これは不安の問題です。原因は夫の不安のパーソナリティーにあります。

不安だから、妻の返事の仕方一つでカッとなるのです。不安ではない人にしてみれば、「なぜそんなことで怒るのだろう?」と不思議に思うでしょう。しかし、本人からすると、そうではないのです。

 

不安な人は、結局誰とも心が結びついていない

そこで、ここからは「その不安の原因は何か?」という話をします。

原因は隠された怒りと敵意です。これは、その人が無意識の中に抱いている敵意で、意識された敵意ではありません。無意識の怒りや敵意が不安の原因ですから、もちろん怒っている本人も自分の怒りの原因を理解していませんし、目の前の妻が原因だと思い込んでいます。

「妻の返事の仕方一つで怒り出す」「出迎えの仕方一つで怒ってしまう」「子どもが、『お父さんお帰りなさい』と言って、玄関で喜んで迎えないと、テーブルをひっくり返して家の中で荒れる」「不機嫌そうに黙り込んでしまう」そういう夫の無意識にあるのは怒りと敵意であり、さらにその奥にあるのは、人との結びつきを求める心理です。

他人と心がしっかりと結びついている、という安心感があれば、そんなことで怒ったりはしません。

表に表れるのは、「すぐに怒鳴る」「テーブルをひっくり返す」ですが、その心の底の無意識の部分では、家族との安定した関係を望んでいるのです。望んでいるのは経済的結びつきでもなく、血のつながりでもなく、あくまでも心の触れ合い……、安定した関係、自分が他者と心が結びついているという確信と安心感です。

それなのに、自分が不安だから、おかしな反応をしてしまう──表に表れた現象としての反応は攻撃的ですが、望んでいるのは「他者と結びつきたい」という人間的な願望なのです。

原因は本人すら気がついていない不安な心。夫は心の底の、さらにそのまた底では安心したいと思っています。不安だからこそ、これだけ怒ってしまうのです。

では、なぜ不安かというと、この場合でいえば、他者、妻と心から結びついていないからです。

次のページ
無意識の敵意が人生を滅ぼす

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

関連記事

アクセスランキングRanking

前のスライド 次のスライド
×