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認知症にコロナ感染まで...病気の予防の鍵を握る「口腔ケア」

2021年09月22日 公開

高橋英登(歯学博士)

 

コロナ禍こそ歯科健診を受けよう

コロナ禍の中で、歯科医院に行くことに不安を持つ人は少なくありません。しかし、コロナ禍だからこそ、口腔衛生に気を付けるべきなのです。実は、日本の歯科医院では例外的な一例を除いて、新型コロナウイルスのクラスターは発生していません。

なぜかというと、コロナ禍以前から歯科医院では、診療スタッフのマスク、ゴーグル、グローブの使用と、治療器具の滅菌、ディスポーザブル(使い捨て)の導入を進めてきたからです。

また、歯科医院では治療や検査の始まりや途中で、患者さんには繰り返し「うがい」をしてもらいます。これは歯科ならではのことなのですが、これがクラスターを発生させないことにつながっているのではないか、とする声もあります。

もちろん、待合室が密にならないように間隔を開けたり、予約制にして患者さん同士の接触機会を減らすなどの努力もしています。コロナ禍だから受診を手控えるのではなく、感染を防ぐためにも歯科健診を受け、口腔衛生を高めるべきなのです。

 

口腔衛生は"誤嚥性肺炎"と"認知症"を防ぐ

お口のケアは、誤嚥性肺炎や認知症の予防にも役立ちます。その仕組みはこうです。誤嚥性肺炎とは、唾液が誤って気管支に入り込むことで起きる肺炎。命を落とすことも珍めずらしくない重大疾患です。

歯周病菌は歯と歯肉の隙間にある「歯周ポケット」に潜んでいます。ここで増殖した歯周病菌が唾液に混入し、それを誤嚥することで誤嚥性肺炎を引き起こすのです。

同様に「アルツハイマー型認知症」も、歯周病との関係が近年指摘されています。歯周病になると、歯肉から血管に抜け穴ができます。その穴を通じて歯周病菌が血管に入り込み、血液に乗って全身の臓器に流れていくのです。

流れていく先には「脳」もあります。歯周病菌の中でも悪性度の高い「Pg菌」という菌が脳に到達すると、そこで毒性物質を放出し、これがアルツハイマー型認知症の原因である「タウタンパク」というシミを作り出すのです。日頃の口腔ケアで歯周病を予防すれば、こうした病気の元を断つことができるのです。

 

自分でできる口腔ケアはこれだ!

歯周病やその先にある重大疾患を防ぐために、日々のセルフケアも大切です。よく、高価な歯ブラシや歯みがき剤を使えば歯周病にならないのかという質問を受けますが、それはあまり関係ありません。正しいブラッシングをすることが重要なのであって、"道具"にこだわるのはちょっと違います。

歯の形状は一人ひとり異なり、理想的な磨き方も個別に異なるので、歯科衛生士の指導を受けるしかありません。そもそも歯石や歯垢は、どんなに頑張っても自分では落とせないので、その意味でも定期歯科健診は重要なのです。

舌の表面には小さな突起が無数にあって、ここに汚れがたまり、ウイルスや菌の温床になります。専用の舌ブラシを使ってもいいし、それがなければ歯ブラシでも構いません。歯を磨く際には舌を磨くことも習慣にするだけで、あなたの口腔ケアの質は格段に高まります。

 

お口のケアは、がんのリスクも下げる

お口のケアが目指すのは「歯周病」の予防。なぜなら、歯周病は万病の元だから。すでに触れたとおり、歯周病は誤嚥性肺炎や認知症との因果関係が明らかになっていますが、それ以外にも糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞など「命に関わる病気」のリスクを高めることが分かっています。

しかし、誰もが一番恐れる病気と言えば、「がん」でしょう。じつは歯周病の人はそうでない人に比べて、がんになるリスクが1.24倍も高いことがわかっているのです。

歯周病で歯を失った人は咀嚼能力が低く、そうでない人に比べて消化器系のがんになりやすい、また食道がんの手術を受けた人の組織からは、高い確率で歯周病菌が検出される、という報告があります。

抗がん剤や放射線治療を行なったとき、歯周病の人はそうでない人より口内炎などの副作用が出やすいのも事実です。他にも様々ながんに対して歯周病がリスクを高める、とする研究報告が相次いでおり、最近ではがんの手術の前に歯周病を治療することで、がんの治療成績を高める取り組みも進んでいるほどです。健康長寿を実現する上で、口腔ケアは避けて通れないのです。

 

歯医者さんを上手に利用しよう!

「歯医者さん選びの基準」は何でしょう。一番重視すべき点は、コミュニケーション能力。その理由は、患者さん自身がその治療や検査の意味を理解し、納得しているかが、治療の成否や満足度を大きく左右するからです。

いま自分の口の中の状態はどうなのか、どんな治療や検査が必要なのか、その治療をすることで日常生活にどんな改善や変化が起きるのかを、患者さん自身が理解し、納得することが重要なのです。

そのための情報提供や話し合いができない歯科医院は避けましょう。優しい先生や怒らない先生はたしかに理想ですが、医療である以上、時には厳しいことを言わなければならないこともあります。

それでも受け入れて、納得して診療を進めていくには、何より信頼関係が不可欠です。そのためにも、コミュニケーション能力に長けた歯医者さんをかかりつけに持つべきなのです。

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