「現代の世話焼きおばさん」こと仲人が、コラムニストになったわけ
2021年09月24日 公開 2024年12月16日 更新
ひと昔前は職場に「いい人いないなら、私の知り合いを紹介してあげるよ」と言う上司やお節介をやいてくれる人がいた。「友人・上司からの紹介」は昭和の時代では結婚に至るためのよくある手法だったのだ。しかし現代では事情は一変。
職場の人間関係も希薄になり、職員に独身であること指摘するのも「セクハラ」の一種として見なされることもあってか、職場が結婚相談所の役割を果たすと言う従来の機能は失われてきた。こうした要因や日本の貧困化・個人主義化もあり、いわば「結婚難民時代」が到来している。
そんな中、昔ながらの「世話焼きおばさん」の役割を負う、仲人の存在も徐々に知られるようになってきている。彼らの一部はネットやSNSで情報発信し、悩める男女を励まし続けている。今回はそんな中、講談社現代ビジネスで連載を持ち、情報発信を続ける高須美谷子氏に、現代の仲人の役割とコラムニストになった理由を取材した。(取材・文:遠山怜)
アプリ婚活隆盛の時代にもいる仲人
――現在の活動を教えてください。
(高須)「お相手に恋する婚活」をテーマにした結婚相談所を立ち上げ、昔ながらの仲人業をしています。よくあるアプリ婚活のようなサービス(通称:情報サービス業)とは違い、お客様一人一人に会って、ご希望を聞き親身に寄り添いながら、地道にお相手探しのお手伝いをすることがミッションです。独自のパーティーが好評で、カップリング率8割を超える会もありました。
――仲人業はアプリ婚活とは何が違うのでしょうか。
(高須)情報サービス業は、登録されている異性の情報が閲覧でき、見合い申し込みができるシステムになっています。が、マッチングはアプリのシステム任せ、本人任せになっており、職員がきめ細かくサポートしてくれたりお相手を紹介してくれることはありません。お会いしてからの交際期間も本人任せになっているところが大きな違いです。
仲人が付いている場合は、初回のカウンセリングからお相手選びの基準作り、プロフィール作成、マッチング、交際中から結婚に至るまですべての局面で仲介し、援助していることがほとんどです。
――きめ細やかさとサポート力が全く違うのですね。
(高須)これは業界裏話になりますが、あとは入会者からお金をもらうタイミングが異なりますね。情報サービス業は、会社によっても様々ではありますが、入会時に諸費用が発生します。
結婚相談所も入会金、月毎の登録料はかかりますが、成婚した際の成果報酬が一番高いように設定されていることが多いのです。情報サービス業は入会させ、継続させればお金になりますが、相談所は成婚させないとお金になりません。ですから、サポートも手厚くなるんです。
最近の相談所では「アプリ婚活をしているがうまく行かないけどどうしたらいいのか」「アプリで出会ったこの人どうですか?」など、アプリ婚活のセカンドオピニオンとしてご相談を受けることもあります。アプリ婚活が広がる分、結婚詐欺師や既婚者も紛れていて被害者も増え続けているので、そうした相談も増えています。
現代でも仲人は「足で稼ぐ」
――今、こうした昔ながらの仲人業は増えているのでしょうか?
(高須)増えているし、その反面減っているとも言えます。今、業界全体で仲人を増やそうとする動きが起きているせいで、20代の若い仲人も増えているのです。しかし、その分、お客様は分散して競争は激化。結婚相談所は年間で9割倒産するという厳しい状況になっているのです。
能力の高い人だけが生き残れる時代で、昔ながらの本当に腕のある、地道に活動している仲人は減っていると感じています。例えば、難病をお持ちの方とか、年収の低い方、海外婚など難易度の高いケースを取り扱えるような相談所か、大手の相談所以外は厳しい戦いを強いられていると思います。
――結婚難の時代でもありますからね。
(高須)誰しも結婚しなくてはならない時代とは違って、今は「妥協するぐらいなら一生独身」という道もありますから、仲人でも迷いがある人もいるのでしょう。「あなたなら、この人が合うよ」と決められない、見分けられない仲人も増えているのです。
――ちゃんとした仲人業をしている人としていない人、どう違うのでしょうか。
(高須)腕のある仲人の方々は、他の仲人の方々との横のつながりがしっかりしていますね。もちろん、他の仲人の方は同業のライバルでもありますが、自分の会員に合う会員がいるかもしれない、貴重な情報提供源なのです。
能力のある仲人はこうした横のつながりを活用し、「〇〇さんの所に××な人がいるって前に聞いたけど、その人とうちの会員は合うかもしれない。セッティングしてもいい?」と持ちかけ、地道にご縁つなぎをしているんです。
――お相手探しは、こうした地道な活動に支えられているんですね。
(高須)自分の会員がどんな人でどんなタイプの人が合うのか、経験的にわかっていなくてはいけません。そして、その相手を探すために自分の足を使います。結婚相談所の登録データから条件が当てはまる方をただ探すだけには留まらず、仲人の中で行われる情報交換の場である「プロフィール交換会」にも顔をこまめに出しています。