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生き方

「傷つけられた」と逆恨みする人の恋が一生実らない根本的要因

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2021年12月24日 公開 2024年12月16日 更新

「傷つけられた」と逆恨みする人の恋が一生実らない根本的要因

恋が実ったようで実っていない。そういった恋がある。淋しさから逃れるために恋愛したり、結婚したりするから恋が実らない。そして失敗すると驚いたことに「相手が悪い」と考える。

数々の人生相談を受けてきた加藤諦三氏は、著書『なぜか恋愛がうまくいかない人の心理学』にて、恋愛においてちょっとしたことで"嫌われた"などと否定的に解釈する人は、自己蔑視していると指摘する。

そうした自己評価の低い人が、恋を実らせるためにはどうしたら良いのか。同書より詳しく解説する。

※本稿は、加藤諦三 著『なぜか恋愛がうまくいかない人の心理学』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

相手の言葉や行動の真意を考える「心のゆとり」

低い自己評価は、自責の下地となる。

他人が怒ると、自分に対して怒っていると解釈してしまう。他人の怒りの原因を自分の弱点と結びつけて解釈してしまう。だから他人は自分に怒っているように感じてしまうのである。

もし高い自己評価なら、そう解釈することはないだろう。相手が怒っていても、自分に対して怒っているとか、自分を責めているとかいう理由がないと思うからである。

自己蔑視した人は不幸である。自己蔑視している人は相手が好意から言うことでも悪く解釈する。

ある恋愛が次のような過程で破綻していった。

彼女のほうは縁起を担ぐほうであった。ちょうど彼女がデートの日に遠い親戚に不幸があった。

時間的には彼女はデートを楽しむゆとりがあった。しかし彼女は、そのお葬式に参列した服装でデートをする気にならなかった。

その理由はその服装で彼とデートをして、彼に何となく縁起の悪さを移してしまうことを恐れたからである。縁起を担ぐ彼女はそのように感じたのである。

そこで彼女はデートを断った。断ったけれども「もし貴方が気にしないならいいわよ」という気持ちはあったし、それは伝えた。

しかし自己蔑視している彼のほうはそれを素直に受け取らなかった。自分は嫌われているから断られたと解釈した。

彼女はデートをしたかった。彼女はデートをしたいという気持ちと相手のことを考えなければいけないという気持ちとで葛藤をし、その結果、会いたいけれども無理をして我慢をしてデートを諦めた。

しかし自己蔑視している彼は、彼女の好意をそのまま受け取らなかった。相手の言葉を「自分に対する思いやり」から出たものであるとは解釈できなかった。彼は断られたと思い、そのことで傷ついた。

それがきっかけで二人の関係はギクシャクし始めた。彼はことごとく相手の言葉を悪く解釈して結局この恋は破綻した。

彼は彼女に傷つけられたと思っている。しかしそうではない。彼が彼女の言葉や態度を自分を軽蔑するように解釈しただけである。彼が自己肯定的な人であるなら彼は傷つかなかった。

もし同じ状況でも彼女の思いやりを理解できる自己肯定的な人であるなら、むしろ断られたことで相手の愛の深さを感じて喜んだかもしれない。

断られるという同じ体験が一方では自己否定的な人を傷つけ、自己肯定的な人を傷つけないばかりではなく、感動させる。

その後も彼は恋愛をするけれども長続きしない。恋が実らない。その原因はいつも相手の言うことを悪く解釈するからである。

そして彼は40歳を過ぎて孤独である。

しかし彼は孤独でいるべく運命づけられていたわけではない。彼の自己蔑視が彼の孤独の原因である。彼がもし、前向きの光の中で自分を眺める人であったら、彼の人生は大きく変わっていたであろう。

自己蔑視した人は、自分を守ることに精一杯で相手を理解できない。先に書いたように自分を守ることに精一杯な人は、どうしても自己中心的である。

彼の場合も相手の真意を理解できない。彼はその後別な女性と恋愛を始めた。

そして交際があるところまで来て、彼女を旅行に誘った。はじめ彼女は断った。断ったというよりも「わー素敵ー」と言わなかったというほうがいいかもしれない。

自己蔑視している彼は傷ついて、もう彼女を誘わなくなった。彼は彼女がなぜ「わー素敵ー」と言わなかったかが理解できない。

彼女は彼女で自己防衛の意識が強い。「自分を守る」ように行動したのである。つまり誰に誘われてもすぐについていく女と思われたくなかったからである。彼女も少し格好をつけたのである。

もう一つ、彼女は彼との恋を大切にしたかった。

そこであまり早く進行し過ぎて壊れてしまうことを恐れた。彼女は彼との恋が壊れることを恐れたからこそ断った。

実は彼女は彼との恋が初めてではない。その前に恋をしている。そのときに恋人に誘われるままについていった。しかしそのときに、「お前は美人だから誘惑が多いから、遊んでいるんだろう」と言われて傷ついた。

彼女は悔しくて悔しくて、その晩眠れなかった。そんな経験から彼女は、今度の恋に慎重になっていたのである。

自己蔑視した人は傷つきやすいから自分を守ることばかり考えて、相手がなぜそのようなことを言うのか、なぜそのような行動を取るのかということが理解できない。理解できないというよりも気が回らない。

相手の言動の動機を理解する心理的ゆとりがない。断られると傷ついてしまって、その神経症的自尊心を回復することばかり考えてしまう。

「相手は、本当は行きたい」。しかしすぐには「行きたい」と言えない。そのことが理解できないで、自分の傷ついている神経症的自尊心を治癒することを考える。

そこで「俺はお前なんか好きではない、女なんか不自由していない」と威張り散らす。そして相手を悲しませる。いつも恋が実らない。

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自己イメージを肯定的方向に修正する

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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