子どもが学校に入学したら保護者は「PTA」に自動的に入会するものだと思っていないだろうか。しかし実は、PTA加入を義務付けるような法的根拠は存在しない。
PTA問題などに詳しい大塚玲子氏は、新著『さよなら、理不尽PTA!』の中で問題の本質は「保護者同士の揉め事」ではなく「仕組み」そのものにあると指摘する。本稿では、ふつうの団体でやったら大問題になりかねない「自動加入」についての一説を紹介する。
※本稿は、大塚玲子著『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
ふつうの団体ではありえない「自動強制加入」
PTA問題の根本にあるのが、まずはこの自動強制加入です。これまで多くのPTAは、保護者に「PTAに入るかどうか」という意思確認をしておらず、子どもが学校に入学したら保護者は自動的に会員として扱われ、先生や職員さんたちも、学校に着任したら自動的に会員とされてきました。
でも実は、PTAに加入を義務付けるような法的根拠は一切ありませんし、PTAの他にそんなやり方をする団体も、そうそうありません。
かつて運転免許センターで「交通安全協会」への加入が義務であるかのような勧誘が行われていたため問題になりましたが、PTAの自動強制加入は、これと同じようなものです。自動強制加入は憲法21条の「結社の自由」に反する、という指摘もあります。
当たり前のことですが、PTAも他のあらゆる団体と同様に、本人の意思にもとづいて入ってもらうしかありません。そのためには入会届を配るなど、PTAに入るかどうかの意思確認を行うことが必須です。
自動強制加入をめぐっては、訴訟も起きています。2014年には、熊本である保護者が「PTAに加入していないのに会費を徴収された」として、会費の返還を求める裁判を起こしました。
最終的には二審で「PTAが任意加入であることを周知する」ことを条件に和解したのですが、今後も同様の訴訟が起きる可能性はあるでしょう。
なお、このとき被告となったPTAの会長は「PTAの冊子を原告に渡したので入会していた」と主張しました。この理屈はさすがに、誰が聞いてもムリがあるでしょう(判決文でも、この点にはつっこみがありました)。
自動強制加入をさせているPTAの会長さんは、もし訴えられた場合、こういう苦しい主張をせざるを得ない、ということは覚えておいてもらえたらと思います。残念ながら、他団体である学校には助けてもらえません。