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社会

「犯罪件数が7年間で62%減少」文化を活かす、京都ならではの防犯活動

京都防犯座談会

2021年12月23日 公開 2021年12月23日 更新

旧京都府警本部が文化庁の長官室に

京都

――天花寺先生は今後、小説を通してどのような京都を描きたいと思っておられますか。

【天花寺】椿原会長はじめ防犯推進委員の皆さんが、毎日、何年、何十年かけてずっと地域を見守り、ロックモンキーズの皆さんが大学生活4年間の貴重な時間を使って、地域の安全のために情熱を注いでこられました。

さらに多くの方が歴史あるお祭りに何十年と関わりを積み重ね、一般家庭の方々が町内でのつながりを作っています。いろんな方々の存在があって今の京都があります。京都を作っているのはそういったすごい方々なんだ、そしてすごいけれども一般の人たちなのだ、ということを小説を通じて伝えていきたいです。

【門川市長】京都はいろんな人の努力でつながっています。天花寺さんはその価値を再認識して、しっかりと伝えていこうとしてくださっているのが嬉しいですね。

祇園祭は、京都のあらゆる自然災害や疫病、戦災を乗り越えるために始まったものであり、みんなで守り合い、支え合って、より魅力的なまちをつくってきました。これは今でいう「レジリエント・シティ」。

今回も、先人の行動から学び、それを今に活かすことでコロナを乗り越え、より良いまちをつくろうとしています。日本中で下火になっている消防団活動でも、京都では50年ぶりに団員が4500人を超えたんです。学生の消防団員は300人近くもいらっしゃいます。

消防団やロックモンキーズの皆様のようにまちづくりに関わる若い世代がたくさんいて、椿原さんのように、生き様をかけて地域防犯活動を続けてくださる方がいる。こんなまち、いいですね。

【ロックモンキーズ】自分自身は祇園祭に、小学校1年生の頃から月鉾で囃子方として参加してきたこともあって、地域の方とのつながりをずっと感じてきました。そして学生になった今でも、歴史と伝統があるまちの防犯に関わることができることに、大きな魅力を感じています。

――最後に、市長から京都の今後の展望をお聞かせいただけますか。

【門川市長】嬉しいことに、来年度文化庁が京都に全面的に移転します。そして移転後の文化庁の長官室は旧京都府警本部に置かれるんです。違和感を覚える人もいるでしょうが、決しておかしいことではありません。取締りだけで犯罪を減らすのではなく、文化でもって犯罪を減らし、安心安全な社会をつくっていこうとしているわけです。

また、京都市は(第3次京都市生活安全基本計画で掲げている)三つの柱に取り組んでまいります。一つ目は、環境づくりです。犯罪や交通事故が起こらない環境をつくっていきます。二つ目は(防犯活動の)見える化(見せる防犯)。

京都市のドライブレコーダーを搭載する公用車等を「動く防犯カメラ」として活用しており、(見守り中と書かれたステッカーを表示することで)防犯活動を「見える化」し、犯罪を抑止するということです。

そして三つ目は、新しい時代の情勢の変化への対応。情報通信社会の発展に伴いネット犯罪などの対策にしっかり取り組みます。京都のみなさまに安心安全を実感していただけるよう、一人ひとりが自分事、みんな事としてやっていく――そんなまちづくりを皆さんのお力と共に進めていきたいです。
 

【プロフィール】

門川大作(京都市長)
京都府京都市中京区生まれ。平成13年より京都市教育委員会教育長に就任し、また第1期安倍内閣の下で「教育再生会議」委員、中央教育審議会等の委員を歴任。平成20年より第26代京都市長を務め、現在4期目。信条は「心を込めてすべてを大切に」。好きな言葉は「共汗」「人生に無駄なことなし」。

椿原正人(京都市防犯推進委員連絡協議会会長)
京都市右京区在住。染色業を営みながら平成6年より右京防犯推進委員として活動し、現在は京都市防犯推進委員連絡協議会会長を務める。青色防犯パトロール活動や子ども見守り活動など、地域の安心安全を実現するための防犯ボランティア活動に尽力している。

天花寺さやか(小説「京都府警あやかし課の事件簿」シリーズ著者)
京都市生まれ、京都市育ち。小説投稿サイト「エブリスタ」で発表した「京都しんぶつ幻想記」が好評を博し、同作品を加筆・改題した『京都府警あやかし課の事件簿』(PHP文芸文庫)でデビュー。本作で第7回京都本大賞受賞。アニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」が実施したアンケート「アニメ化してほしいライトノベル・小説は?(2019年下半期)」では第3位にランクインした。

下記三名学生ボランティアロックモンキーズ所属
野村理絵(龍谷大学代表)
竹内大雅(関西大学副代表)
中西紬(立命館大学副代表)

学生ボランティア・ロックモンキーズ
京都府警本部内に事務局を置く学生防犯ボランティア団体。京都府内在住・京都府内の大学、専門学校に通う学生で構成され、現在107名が所属。警察の行う各種犯罪抑止活動や地域住民等による自主防犯活動に参加し、学生パワーと情熱により安心安全な地域社会の実現に貢献している。

 

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