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「犯罪件数が7年間で62%減少」文化を活かす、京都ならではの防犯活動

2021年12月23日 公開

京都防犯座談会

京都

小説「京都府警あやかし課の事件簿」シリーズは、京都府警が擁する「人外特別警戒隊」、通称「あやかし課」のメンバーたちが化け物から神様まで、あやかしが絡むあらゆる事件を解決する現代ファンタジー。

小説の舞台である京都市は、2014年に京都市と京都府警が「世界一安心安全・おもてなしのまち京都市民ぐるみ推進運動」に関する協定を結び、京都ならではの地域力・人間力を活かし、市民ぐるみで独自の防犯活動を行ってきました。その結果、刑法犯認知件数が7年間で約62%減少するなど、めざましい結果を残しています。

そんな「京都独自の防犯」について、京都市長・門川大作さん、京都市防犯推進委員連絡協議会会長・椿原正人さん、「京都府警あやかし課の事件簿」シリーズの著者・天花寺さやかさん、そして学生防犯ボランティア・ロックモンキーズの皆さんが語り合いました。

 

「世界一安心安全・おもてなしのまち京都」とは

京都

――門川市長から、京都ならではの防犯の取り組みについて教えてください。

【門川市長】7年前に京都府警と協議し、「世界一安心安全・おもてなしのまち京都市民ぐるみ推進運動」に関する協定を結びました。京都ならではの地域力、文化力、それらを担う人々の人間力を活かしたまちづくりをしていこうと考えたわけです。

地域の人たちが(安心安全を)「自分事」「みんな事」として考え、区役所や警察と連携しながら犯罪を減らしていこうという協定です。その結果、刑法犯認知件数が7年間で21,326件(平成25年)から8,155件(令和2年)へと約62%減り、全国の100万人以上の都市で最も高い減少率となりました。

京都の千年を超える都の歴史は、町衆自治の歴史です。かつて京都には天皇陛下はいらっしゃいましたが、大名はいませんでした。町衆こそが、大都市・京都の隅々までを自分たちで治めていたんですよ。私たちは京都で培ったこの精神と文化を活かして子どもたちを育て、犯罪を克服していこうとしています。

――実際に京都市で長年見守り活動をされてきた、椿原会長の活動について教えてください。

【椿原会長】私たちは青色回転灯をつけた車で「青色防犯パトロール」を行っています。観光客の多い嵐山などでは5か国語で注意喚起をしたり、子どもたちの登校時間や夜間に市中を回ったりしています。

私たちが意識しているのは「この地域に悪い人を入れない」ということ。簡単に言えば、見知らぬ人がいたら声をかけましょう、という近所付き合いの啓蒙です。「世界一安心安全・おもてなしのまち京都」を目指して、特に右京区では私が犯罪をなくすぞ、という気概で活動しています。
 

京都の防犯意識「よそさん見てはるえ」

京都

――京都市内で生まれ育った天花寺先生は、「京都の防犯」についてどのように感じてこられましたか。

【天花寺】京都のまちを歩いてるときに感じるのが「どこにいても誰かに見守ってもらっている」という感覚です。椿原会長をはじめ多くの方が見守ってくださっていることに加え、京都の町内にはいたるところにお地蔵さんや神社仏閣があるので、神様や仏様が見守ってくださっていると感じたりもするんです。

――なるほど。先生らしい視点ですね。

【天花寺】さらに京都の防犯が機能しているのは、人と人とのつながりが非常に強いからだと思います。町内では、「今そこを通ったのは、〇〇さんちの息子さん」といったように、お互いのことをよく知っているんです。

「誰かに見守ってもらっている」という感覚は小さな挨拶や、昔からある地蔵盆や、もっと大きいところでは祇園祭などのお祭りによって生まれたつながりに源があると思います。交流する、見守る、声を掛けるといった、単純だが防犯において大切なことが、京都ではずっと続いているのです。

――学生ボランティア団体のロックモンキーズさんは、どのような活動をされていますか。

【ロックモンキーズ】ロックモンキーズの活動内容は、主にパトロール、防犯教室、啓発活動、SNSでの情報発信です。特に若い世代の方に、防犯活動に興味を持ってもらうためにSNSには力を入れています。

【天花寺】ロックモンキーズさんのように若い世代の方に防犯への意欲があるのは、京都の「よそさん見てはるえ」という感覚からだと思います。「誰かが必ず見てるよ」「神様、仏様が見てるよ」と、親や祖父母から言われて育った京都の方は多いと思います。

京都の方々は、「大人としての矜持」を持っています。自分で自分を律する心を持ち、すごく道徳的なんですね。人の迷惑になることはしない。まちはみんなのものだから、むやみに汚さない。基本的なところをちゃんとしなあかんという心が京都には根付いています。その矜恃が地域の防犯活動にもつながっていると思います。

――門川市長も「誰かが見てはる」意識は京都で育つ中で自然と芽生え、それが防犯につながっていると思われますか。

【門川市長】はい。私らの世代は「お天道さんが見てはるよ」とよく言われたものですが、中高生の読者が多い天花寺さんから、今のようなお話を聞けて胸が熱くなりました。最近は日本だけではなく世界中で、今が良かったらいい、自分や自分の国が良かったらいいという風潮が見えます。

そしてコロナ禍で貧困、格差、孤立、さまざまな社会の課題が顕在化し、加速しています。そんなときに天花寺さんが京都に伝わる生き方・哲学といった本質を掴み、小説にしてくださいました。これは文化の継承にも、子どもたちの健全な成長にも、犯罪の防止にもつながっていくと思っています。

――椿原さんは、京都の文化と防犯のつながりをどのようにお考えですか。

【椿原会長】私は京都の文化の一つである地蔵盆にも関わっており、お地蔵さんの周りで地域の方に話をする時、子どもたちには「1日のはじまりは、おはようございます。終わりは、おやすみなさい」、大人には「子どもは宝ですから粗末にしないでください。子どもの話を聞いてください」とお伝えしています。

10年ほど前は、子どもたちがよくコンビニにたむろしていたんです。私は青色防犯パトロール車で、地域内のコンビニを1店舗ずつ回り、子どもたちと車座になって話をいたしました。

この前、「おっちゃん、覚えてるか。昔コンビニでおっちゃんに叱られた」と話しかけられました。立ち直った子たちの声を聞くのは嬉しいものです。今はコンビニに居座る子はいなくなりました。

皆さんには「青い光を見たら、灯台だと思ってください」とお伝えしています。おまわりさんの赤い光は、地域を守る電灯。私たちの青い光は、安心安全の灯台です。地域を青色防犯パトロール車で回っているとき、子どもの半分以上は敬礼してくれ、大人の方からは「ご苦労さん」と挨拶いただきます。

――ロックモンキーズの皆さんは、京都の文化を防犯に活かすためにどのような取り組みができるとお考えですか。

【ロックモンキーズ】京都のまちが碁盤の目であるという特徴を活かした防犯が挙げられると思います。碁盤の目であるということは、見通しが良くて防犯性が高く、地図が見やすいというメリットがあります。パトロールを通じて得た情報をもとに、危険箇所マップを作成しようと考えています。
 

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