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この財産で一生やりくりできるのか...「会社員が40歳でリタイア」の実現可能性

山崎俊輔(フィナンシャル・ウィズダム代表,ファイナンシャルプランナー)

2021年12月30日 公開

この財産で一生やりくりできるのか...「会社員が40歳でリタイア」の実現可能性

「FIRE(ファイア)」という言葉が流行の兆しをみせている。「Financial Independence, Retire Early」の略で、日本語では「経済的な独立と早期退職」という意味だ。アメリカで広まったとされるムーブメントで、日本でも将来の経済的な不安から、取り入れることへ期待の声が集まっている。

ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔さんは、著書『普通の会社員でもできる 日本版FIRE超入門』の中で日本の制度にもとづいたFIREを考える必要があると説く。日本版FIREにおいて、「何歳でリタイアするか」という目標はどう設定すべきなだろうか。

※本稿は、山崎俊輔著『普通の会社員でもできる 日本版FIRE超入門』(Discover21)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

夢は40歳代での早期リタイアだが、難易度は高い

30歳代後半あるいは40歳代前半、というようなかなり早い時期の引退がFIREに関する書籍ではしばしば取り上げられます。夢がある話ですが、これは本当に実現性があるものでしょうか。社会人になって20年前後で引退する、というのはたしかに憧れます。

しかし、普通の社会人が22歳から65歳までとして43年働く時代にその半分だけ働いてリタイアしようとするのはそう簡単ではありません。

さらに、あまりにも早いリタイアは2つの問題があります。

ひとつ目の問題は「そこから働かないで取り崩した場合、年金受給開始年齢までの間、資産が持つかどうか」という計算の不確定要素が大きいということです。同じ取り崩しでも、5年の計算と20年以上の計算は、まったく違ってきます。もちろん長期に及ぶほど不安定になります。

またもうひとつは「社会人人生の前半で2倍稼ぐことはかなり苦しい」という問題です。

普通の人が65歳まで43年間働くとして、22歳から45歳までの収入と、それ以降の収入はどちらが多いでしょうか。それは明らかに後者です。若い頃はビジネススキルを育てる時間でもあり年収は低くなります。キャリアが熟して年収も上がってくる後半に獲得する賃金のほうが大きくなるのは当然です。

だからといって、不可能と決めつける必要はありません。挑まない人にゴールはやってこないので、自分がどこまでできるか分析しトライしていくことが大切です。

 

50歳代でのFIREは実現可能性はあるが、運用手法が悩み

日本でのFIRE指南本の多くは50歳代でのリタイアを実現した方が書かれているケースが多いようです。多くは運用においてそれなりの苦労や工夫をして、いわゆる「億り人」になってFIREをした人たちです。

50歳代でのFIREは、まだまだ体力や活力は残しつつ、仕事から離れてやりたいことに邁進できるのが魅力です。かつ、準備期間としては40歳リタイアより10年ほど長く確保でき、お金を取り崩す期間も10年ほど短縮できるため、資金準備の難易度は一気に下がってきます。

簡単にいえば「取崩額が4000万円減り(400万円×10年)、準備額が3000万円増える(300万円×10年)」と考えれば、目標金額をクリアする可能性は大きく高まります。50歳代FIREは、それなりの実現性があるパターンといえます。

ただし、運用手法をどうするかについては悩みがあります。「億り人」の多くは高いリスクを取ってきた成功者であって、高い利回り獲得がFIRE実現の主要因となっています。それぞれ、自身の投資スタイルを紹介していますが、リスクが高い投資方法の再現性があるかは保証が難しいところがあります。むしろ投機的手法を選択して失敗した場合、元本の多くを損なう恐れもあります。

私は誰でも取り得るベター(といってもベストに近いベター)な運用の方法を推奨しますが、期待リターンは下がります(といっても年4〜6%くらいはねらえますが)。このあたりは、別途解説する章を用意しますので、各自判断してみてください。

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実現可能性が高い「プチFIRE」。5年の早期リタイアをまず目指せ

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