1. PHPオンライン
  2. くらし
  3. じつは年齢は関係ない...「脳の老化が進みやすい人」の特徴

くらし

じつは年齢は関係ない...「脳の老化が進みやすい人」の特徴

加藤俊徳(脳内科医/医学博士)

2022年01月07日 公開 2023年09月05日 更新

 

「楽しくない」のは脳が動いていない証拠

今、申し上げた通り、慣れやマンネリも脳が衰える原因になります。

どんなに高度なスキルや知識を必要とする仕事でも、継続すれば慣れてきます。仕事に慣れて効率がアップするのは望ましいことですが、その反面、脳を使わなくなるので、脳への刺激は減ります。先ほど述べた五感の活用と併せて、いかに日常の中に自分なりの発見と、少しの変化を作り出すのか。これを意識したいものです。

例えば、新しいスポーツを始めてみる、新しいプロジェクトを立ち上げてみるなど、新しいことへの挑戦は潜在能力細胞を刺激し、自分にとって新たな学びになります。

新たな発見や喜び、楽しみ、驚きなど、脳は新鮮なものに刺激されやすい性質があります。一方、新鮮なものに反応しなくなり、古い記憶を反芻するだけの状態が、認知症です。認知症が進むと、新しい情報を取り入れて、過去の記憶と照らし合わせながら現在を作っていくことができなくなるのです。

そうならないために、大人こそ、もっと学び、色んな新しいことを吸収していかなければなりません。脳が成長する仕組みが、それを要求しているということです。

その際のキーワードは、「自分自身が楽しむ」こと。「楽しい」という感覚は、脳が働いている状態なのです。

反対に、「楽しくない」とか、「やりたくない」と感じるのは、自分の脳が働いていないから。興味のない話を聞いて「つまらない」と感じるのは、脳への刺激が不足して脳が働いていないから、当然なのです。

だからといって、その状態に甘んじていると、脳が衰えていきます。どうすれば自分の脳が楽しめるのかを、柔軟に考えていくことが大切です。

例えば私なら、同じテーマで取材を受ける場合でも、「絶えず違うことを話す」とか、前例のある仕事でも「他人のマネは絶対にしない」とか。楽しく仕事するためにどうするかを考えることで、再び脳が働き始めるのです。

 

利き手と逆の手で歯磨きをしてみよう

普段、使っていない脳を使うことも意識してみてください。例えば、右利きの人が意識的に左手を使うようにすると、脳に刺激を与えることができます。

そもそも右利きの人は、左手をほとんど遊ばせているため、左手の動きを司る右脳が未熟で、スカスカな状態です。使っていなかった右脳に新たな刺激を加えるために、左手で歯磨きをしたり、ガスの元栓を左手で締めてみたり、ドアの開け閉めも左手を使うなど、これまで右手を使っていた動作を左手でしてみましょう。

最初は面倒に感じるかもしれませんが、赤ちゃんだって面倒臭がらずに未熟な脳を刺激して成長しているわけですから、大人の私たちが面倒だなどと言っていられません。少しだけ負荷のかかる挑戦を楽しみながら、未使用の潜在能力細胞を活性化させましょう。毎日続けていくうちに、きっと面倒臭くなくなるはずです。その時こそ、脳が成長した瞬間です。

このように、脳の成長に必要な学びは学校の勉強だけではありません。身体を動かしたり、五感を使ったりして、脳番地に満遍なく刺激を与えていくことが脳の老化防止には重要です。

そして、脳の使い方は、その人の生活パターンに大きく影響されます。脳に刺激を与えて脳を成長させるという視点から、自分の生活パターンを見直してみるのもいいかもしれませんね。

 

元気な100歳の「自分なり」の健康活動

最後にご紹介するのは、脳トレです。脳トレにも色んな種類がありますが、数字で計算したり、文字を読んだり、絵を識別したりすることで、それぞれに対応する脳番地が刺激されるので、色んな脳を使う訓練になります。脳トレによって脳が活性化されることは、研究結果からもある程度わかっています。

以前、ある番組の企画で100歳以上の方にお会いする機会がありました。100歳を超えても元気な方は、健康維持のための食生活や運動習慣、知的活動を自分なりに持っていらっしゃいました。つまり、自分の健康状態に注意を向け、老化防止のための活動を意識的に日常生活に取り入れているのです。

何もしないでいると脳も身体も衰えていくことに、自覚的でいましょう。自分なりの老化防止策を実践することで、老いない脳を手に入れてください。

 

関連記事

×