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生き方

実は不安から逃れている?「なぜか病気がちな人」の本音

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2022年01月24日 公開 2023年07月26日 更新

 

新型うつは存在しない

「新型うつ病」が流行ったことがありました。それこそNHKでも特集されるなど、メディアで大きく取り上げられました。

しかし、本当は「新型うつ病」などという病気はありません。あれはメディアの報道に乗せられた精神科医が作り出した、実際にはまったく無い病気です。

なぜ新型うつ病になるかというと、「うつ病」といえば、会社を休めるからです。何だかよく分からなくても「うつ病です」といえば会社を休めます。だから、新しいうつ病が出てきたというのです。

学生が学校を欠席するのでも、ビジネスパーソンが会社を休むのでも、病気と言えば認められます。すると、公然と休むために「病気」と言うようになるのです。

先ほどのロロ・メイの話の続きに戻りますが、こんなことを言っています。

「いわば、このことは現代文化には不安その他の情動的ストレスが、きわめてしばしば身体的形態をとるという事実と関連があるのももっともなことだ」(前掲書『不安の人間学』64頁)

しかし、心の葛藤を解決しなければ、薬を飲んでもお医者さんに行っても体調は引き続き悪いままです。

心の問題が難しいのは、肉体の問題とは違って、病気だといえば病気になってしまうことです。

例えば、39度の熱がある時には本人も病気だと分かっていますし、周りも病気だと判断します。まさか高熱があるのに、トレーニングで走る人はいません。こういう場合は、自分にも他人にも病気ということが分かります。

ところが心の病気は見えないので、本人が「私、病気です」と言うと他人からは分からなくても、それで病気になってしまうのです。

こうした身体的形態を取る事実は、現代を理解する上で非常に重要です。というのも、病気ではないのに病気という形態を取って、「新型うつ病」「さとり世代」といった、まったく違った事実が作り上げられてしまうからです。

【著者紹介】加藤諦三(かとう・たいぞう)
1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。   

 

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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