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殺処分になりやすい“赤ちゃん猫”...小さな命をつなぐ「ミルクボランティア」の役割

猫びより編集部(辰巳出版)

2022年02月21日 公開

殺処分になりやすい“赤ちゃん猫”...小さな命をつなぐ「ミルクボランティア」の役割


動物愛護センターが引き取る猫のうち約6割が飼い主のいない幼齢の子猫だ

猫に生かされている。冗談でも大げさでもなく、骨の髄からそう感じている人は少なくないのではないでしょうか。とりわけ、偶然出会ったいわゆる「保護猫」によって、驚くほど人生が変わったり、人生が豊かになった、という話は本当によく聞きます。

環境省の発表(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html)によると日本では令和2年度に2万匹以上の犬と猫が殺処分されているといいます。猫の場合その多くが、親猫とはぐれた野良の子猫や飼い主がいない幼齢の猫。子猫の命を救うため、生後約2ヶ月になるまで"期間限定"でお世話をする「ミルクボランティア」に勤しむ人々がいます。関西で活動するキムラカオリさんにお話をうかがいました。(写真・文 キムラカオリ)

※本稿は、『猫にひろわれた話』(辰巳出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

命のバトンをつなぐ"ミルクボランティア"

猫びより編集部
完全室内外・不妊手術・終生飼育の徹底が求められる 

ミルクボランティアとは、母猫からはぐれるなど何らかの理由で自活できない赤ちゃん猫を生後2ヶ月になるまで育てて、里親さんに繋げるボランティアです。

私がミルクボランティアを始めたのは、2014年6月に自宅の近所で、道路に落ちていた赤ちゃん猫を拾ったことがきっかけでした。拾った赤ちゃん猫をインターネットの情報や動物病院のご指導のもと、育てていくうちに、春先から秋にかけてあちこちで同じように赤ちゃん猫を拾って困っている人が多いという現状を知りました。

拾った人が同じようにみな育てられるわけではなく、やむなく保健所へ持ち込み、人手が足りないため処分される対象の多くが実は赤ちゃん猫だということも知りました。

ミルクボランティアシステムはまだ全国の動物愛護センターで始まっているわけではないということ、それならば少しでも助けたい!と思ったことがこの活動のきっかけです。全国の動物愛護センターで赤ちゃん猫も助かる取り組みがスタートすればと願っています。

もちろん、赤ちゃん猫を救うだけでは意味がありません。家庭内における猫の終生飼育、不妊手術の徹底、完全室内飼育、野良猫のTNR(※)など様々な方面からの行動で、いつかは「おうちのない猫」がいなくなり、ミルクボランティアが必要でなくなる世の中にすることが、私にとっての最終目標です。

※TNR……野良猫を捕獲(Trap)して不妊手術(Neuter) を施し、元いた場所に戻して(Return)一代限りの命を見守る取り組み。TNR済の印として耳先を桜の花の形にカットされた「さくらねこ」もいる。

 

生きようと頑張る小さな命に励まされる

猫びより編集部
乳飲み子は2~3時間おきに授乳する

毎年30~40匹の乳飲み子や子猫がやってきます。始めた頃は、私の子どもたちも手伝ってくれましたが、成長するにつれ学校生活、部活動などが忙しくなり、今は基本的には私一人です。ただ、乳飲み子の容態の急変で家事ができないなどの場合はそちらを手伝ってくれるようになりました。

一緒になって乳飲み子を育てた娘も、生後2ヶ月の可愛い時期に里親さんの元へ行ってしまうのだとわかり毎度号泣していました。何度も泣いて何度もお別れを繰り返すうちに、できるだけ1匹ずつに思いをかけ過ぎないようになりました。大人の私でもやはり大切に育てた子たちとの別れは辛いものです。

そんなお別れをまだ小学校の低学年だった娘に何度もさせてしまったことは私も反省していますが、ミルクボランティアは辞めないでほしいと言ってくれます。「助かる命があるのなら」と理解をしてくれる娘や家族に感謝しています。

目も開いていない乳飲み子の授乳は昼夜問わず2~3時間おきです。月齢が違う子が同時に来た場合や、授乳期間が終わってすぐまた違う子が来た場合、人間側の睡眠不足が続きます。

そして健康な子ばかりではなく、時に重篤な状態の子もお預かりすることがあります。どんなに手を尽くしても助からない命があるということが一番辛いです。

ですが、か弱く儚げだった乳飲み子が立派に成長することが何よりも嬉しいです。普段の生活では目にすることのない小さな命が一生懸命に生きようと頑張る姿にこちらも励まされています。

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