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生き方

中小企業にとってSDGsが「絶好のビジネスチャンス」と言える根拠

立花佳代(株式会社スプリング代表取締役)

2022年04月11日 公開

中小企業にとってSDGsが「絶好のビジネスチャンス」と言える根拠

「SDGsってよく知っているけど、何をしていいかわからない」という方や「SDGsは意識の高い大企業がやっていること」と、自分の仕事とは関係ないときめつけている方も多いと思います。

でも、それはビジネスを広げる機会を逃しているかもしれません。

「宣伝や広告、ブランドイメージの構築に多額の資産を投じられない中小企業にとって、SDGsはビジネスの新しいチャンスを与えてくれるものだと私は思います。」

そう語るのは、SDGsが話題になるはるか前から、インドの小さな村に自社工場をつくり、産業のない村の女性たちを雇い、貧困の解消やジェンダー平等につながる活動をしてきたエシカルアクセサリーメーカー、スプリング代表の立花佳代氏。

今回は、立花氏の著作『やりたいこと、全部やりたい。』から一部抜粋、再構成。SDGsについて詳しく知らない方にこそ知ってもらいたい、中小企業がSDGsでビジネスチャンスを広げる方法についてお伝えします。

 

SDGsで他社と差別化できる「ストーリー」を生み出す

そもそも、SDGsっていわれても何をすればいいの?と思われるかもしれません。しかし、そんなに難しくありません。簡単に言えば、自社の強みとSDGsの相関関係を見つけて、掛け合わせること。そうすれば、それがSDGsになります。

わたしの場合は、もともと韓国を拠点に生産・販売していたので、その経験を生かしつつ、産業が育っていない場所の人たちと一緒に、その地域の強みとを掛け合わせて、新しい事業を生み出しました。

いま、わたしが代表を務めるスプリングでは、事業の柱のひとつとして、インド伝統の手刺繍やビーズワークを活かしたアクセサリーブランド「MAYGLOBE by Tribaluxe」(メイグローブ バイ トライバラクス)を展開し、おかげさまで、インドの貧しい村に雇用を生んでいることなどが注目され、エシカルファッションのブランドとして認知が広がっています。

このように、SDGsをビジネスに取り入れているうちに、自分の会社ならではの「ストーリー」が生まれてきます。商品は真似されるかもしれませんが、ストーリーは真似されません。

たとえば、ただ輸入しただけだと、すぐにほかの誰かが真似をできてしまいます。もちろん、インドから輸入することも、いい商品を見つけることも苦労はします。

でも、そこに、他人の心を動かすような「ストーリー」が生まれるとは思えないのです。

一方で、一緒になって新しいものをつくろうとすると、そこに「ストーリー」が生まれます。

このように、いろいろな苦労であったり、つくり手の思いであったり、商品をつくる過程で生じた紆余曲折などの「ストーリー」は、わたしと、相手でしか紡ぎだせないものです。

それは、真似しようにも真似ができないものです。

そして、苦労すれば苦労するほど、「ストーリー」が魅力的になってくる。だからこそ、開発途中に大変なことがあっても、これで「ステキなストーリー」になるかもと考えられて、前向きになることもあります。

いま、これだけいろいろな情報がインターネットで行きかうなか、商品は真似されやすい時代になっています。なかなか、商品で差別化をはかることは難しく、価格競争に身を投じなければならなくなります。

だからこそ、そのブランドや商品のもつオリジナルの「ストーリー」で差別化をはかることが、とても大切なのではないでしょうか。

 

「いいもの」を追及していたら、いつの間にか「SDGs」がついてきた

先に、わたしはビジネスとSDGsを掛け合わせて事業を生み出した、とお伝えしました。しかし、そもそもわたしは「SDGs」「エシカル」を意識してインドの事業をはじめたわけではありません。根っからの商売人ですから、ただ「いいもの」つくり、お互いに「いい仕事」がしたいと思っていただけです。結果として、SDGsがついてきただけなのです。

わたしが求めていたのは、インドの民族文化に根差した高度な職人技が使われていて、かつ日本のファッション感度の鋭い人たちが納得してお金を払って、楽しめるアクセサリーをつくることでした。

インドには、「手がこんでいるな」「どうやってつくっているの?」と思わずうならされる技術がたくさん受け継がれています。
それらを存分に活かして、日本市場向けの生産ラインをつくり、消費者であるわたしたちが商品に見合う対価をきちんと払えば、お互いに幸せになれるはずだと考えたのです。

いいものをつくるために、適切な報酬を支払う。そういうことを続けているうちに、気づけば村の暮らしに変化が見られ、村の女性たちも生き生きと仕事をして、生活に必要な設備も増えていきました。

自分がやってきたことが村の生活の向上に影響していると気づくことで、健康問題や教育問題などにも手を伸ばしていくようになりました。

いつだって活動の真ん中には、わたしだったり会社だったりの思いがありました。エシカルもSDGsも、中心にあるのは自分の「やりたいこと」でいいのです。
誰かのためにとか、社会のためにとか考えるのは無理があるでしょうし、それこそ流行りで終わってしまっては何の意味もありません。本当の意味で持続可能な活動にしていくためには、やはり自分自身を中心に置くことが大事なのではないでしょうか。

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