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社会

デジタル化で生まれた新たな格差...「情報弱者」は放っておいても良いのか

佐藤岳詩(専修大学文学部哲学科教授)

2022年05月29日 公開

デジタル化で生まれた新たな格差...「情報弱者」は放っておいても良いのか

急速に進む情報化社会のなかで、こどもたちがSNS上でのいじめや犯罪に巻き込まれるトラブルが後を絶ちません。情報を正しく安全に活用するためにも、情報教育のあり方を考える必要があるでしょう。そこで重要になってくるのが「情報倫理」を身につけること。情報倫理とは、情報を扱ううえでのモラルやマナーのことです。情報化社会に潜在する危険から子どもたちを守ると同時に、インターネットをよりよく活用できる方法を考えてみましょう。

※本稿は、佐藤岳詩 監修/バウンド 著『こども倫理学 善悪について自分で考えられるようになる本』(カンゼン)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「情報倫理」ってなんだ?

みなさんのなかにもTwitterやInstagram、TikTokなどのSNSを使っている人もいることでしょう。SNSを使っている人のなかには、ウソの情報を流したり、SNS上でいじめをしたり、犯罪に誘ってくる人もいます。インターネットにはSNSのような楽しい面もありますが、その反面、たくさんの危険も潜んでいます。

たとえば、SNSを使えば、Aさんが万引きをしていなくても、「Aさんが万引きをした! 電話番号は080-1234-5678。住所は東京都〇〇区〇〇1-2」とウソの情報を簡単に発信できます。インターネットは世界中の人が見ることができるので、その情報を信じた人が電話してきたり、家にいやがらせをしたりするかもしれません。もし自分がそんなことをされたらイヤでしょうし、困るはずです。

そこで重要になってくるのが「情報倫理」です。情報倫理とは、情報を扱ううえでのモラルやマナーです。インターネット上では情報発信者の顔や名前がわからないことがほとんどです。身元がわからないからといって、自分がされてイヤなことを他にしてはいけません。

ウソの情報を拡散すれば加害者になるかもしれませんし、情報倫理がない人が増えれば、あなたが被害者になる可能性が高くなります。

 

SNSで友達の悪口を書いてもいいのだろうか?

SNS上でのいじめが問題になっています。SNS上に悪口を書かれたことがある人も、書いたことがある人もいるかもしれません。SNSでいじめられた経験がある人なら、それがどんなにつらいことかはわかるでしょう。そんな経験がない人でも、それがどれだけつらいことかは、少し想像すればわかるはずです。

文部科学省によれば、SNSなどを使った「ネットいじめ」は、判明しただけでも年々増える一方です。いじめ全体の件数は減少傾向にありますが、ネットいじめは増えており、とくに小学生のネットいじめの増加幅が大きくなっています。

ネットいじめは、学校の先生やおうちの人の目が届きにくいところで起こっているので、実際にはこの数字よりもっと多いでしょう。残念なことに、2020年11月には同級生からのネットいじめが原因で、小学6年生の女の子が自殺する事件も起きています。

一方、日本国憲法第21条は国民の「表現の自由」が保障されています。たしかに、私たちには言いたいことを言う自由があります。だからといって、人の悪口を言ってもいいのでしょうか。SNSで悪口を言うのは「表現の自由」で保障されていることなのでしょうか。

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