「わかってもらいたい」なら、先にわかってあげる
自然な弱さを強さに変えるのに、他人からの共感、つまり、「わかってもらうこと」は欠かせません。
わかってもらう工夫をし、「わかってもらう」のハードルを下げたとしても、それでもわかってもらえないことはもちろんあります。もっとも悩まされるのは、お互いの「わかってもらいたい」がぶつかってしまったときです。
たとえば、上司と部下、夫と妻、親と子など、接する時間が長く、かつ感情的なやりとりが多い関係性において、お互いの「わかってもらいたい」をぶつけあう、「わかって欲しい戦争」が起きやすくなります。
仕事の会議のような論理的に話しあう場でも、よく起きるもの。
「わかって欲しい戦争」を終わらせるのは難しくありません。「わかって欲しい」を奪いあっているのですから、まずは絶対に正論を口にしないこと。
「どちらが正しいか」の世界から抜けて、より冷静なほう、本書を読んでいるあなたから先に相手をわかってあげてください。考えや気持ち、価値観、いいかえると、相手がそう考えている、そう感じている、そう信じていることを代弁できるぐらい「わかってあげる」のです。
一度、夫婦不和の仲裁をしたことがあります。典型的な「わかって欲しい戦争」で、どちらも「大変さをわかってくれない」と言っていました。
個別でよくよく話を聞いた結果、より冷静だったのは奥様のほう。「旦那さんの言い分を代弁できるぐらい聞いてあげてください」と奥様と打ちあわせし、私から旦那様にこう伝えたのです。「奥様、反省されていました。自分の気持ちばかり主張して悪かったと。お二人でお話しされてみてはいかがですか?」と。
結果、「わかって欲しい」が満たされた旦那様が「自分のことばかりになって済まなかった」と奥様の考えを進んで聞いてきたそうです。
奥様いわく、「結婚してから、あんな素直な夫は初めて見ました」とのこと。人は「わかってあげる」と「わかってくれる」ものなのです。
人にとっての三つのK、協力、共感、共有は精神的な食事にも等しい。本来、毎日のように摂取しないといけないぐらい大切なもの。一度、「わかってあげる」と「わかってもらう」が循環し始めると、人間関係もよくなります。
わかってもらいたいのはあなただけではない。目の前の人もわかって欲しいと思っている。お互いが口を開いていてはどちらの声も聞くことができない。冷静な側が先にわかってあげる。
人間関係というのはお互いの間にあるもの。双方のやりとりによって決まるものです。その関係性にどちらのせいというものはありません。相手に対してあなたが感じていることというのは、たいてい相手があなたに対して感じていることと同じなのです。
「わかって欲しい」と思うなら、冷静なあなたから先にわかってあげてください。そうすれば、戦争も終わって、共感が循環する関係性が始まるでしょう。