「やる気が出ない」が危険信号? 中高年に不調を起こす脳の変化
2022年08月15日 公開
「なかなかやる気が出ない」「集中力が続かない」そんな悩みを抱えている人がいます。これは中高年以降に起こる「脳の変化」が原因かもしれません。 老年精神医学の専門家である和田秀樹氏が解説します。
※本稿は『医者が教える50代からはじめる老けない人の「脳の習慣」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。
「歳だから」を言い訳にしない
誰しも50歳を超えたあたりから、スポーツ、仕事、何をやるにも20代、30代のときのような「体力」のないことに気づいて愕然とするものです。体力だけでなく、何をするにも「なかなかやる気が出ない」「腰が重くなった」「熱中できない」「集中力が続かなくなった」─このような日常の「症状」からも「もう若くない」ことに気づかされます。
ここで、「もう歳だから」「寄る年波には勝てないから」仕方がない─と、言い訳ともあきらめともつかぬ言葉で自分を慰めてしまいがちなのですが、それでは何の問題の解決にもなりません。
この「寄る年波」が「どこから寄ってきているのか」を知ることで、その「波」の訪れを遅らせることができれば、「寄る年波」の影響を最小限に抑えることもできるのです。
そもそもこの「寄る年波」の大部分は、「自分の年齢(加齢)とともに『脳』に問題が生じてくること」が原因、つまり「脳」からきています。
ではその「脳」の問題とはどのようなことなのでしょうか。
中年以降の「脳」のなかで起こっていることと、その影響について知っておくことが、「老いへの焦り・恐れ」を克服する第一歩です。
中高年以降に起こる「脳」の変化
1. 前頭葉の萎縮...脳の前頭葉は、人間らしい「知性」─意欲・好奇心・創造性・計画性などを司る部分ですが、早い人で40代から縮み始める、つまり老化し始めます。萎縮が進むと、感情のコントロールがきかなくなったり思考が平板になったりします。
2. セロトニンなどの脳内伝達物質の不足...セロトニンの減少は「うつ」を引き起こしやすくします。一時的な減少でも意欲低下やイライラなど心の不調をもたらします。
3. 動脈硬化...脳の血管は非常に細く、動脈硬化が進むと徐々に、細い血管の内部がつまりやすくなるため、とりわけ深刻です。脳の動脈硬化が進行すると自発性がなくなります。
4. 男性ホルモンの減少...男性ホルモンは、実は女性にもあり(量は男性の10分の1〜20分の1)、大脳の視床下部から「分泌せよ」との指令を受けた脳下垂体が、男性の場合は主に精巣と副腎、女性の場合は卵巣や副腎に働きかけることで分泌されます。
しかし司令塔がいくら頑張っても加齢により精巣や卵巣、副腎の機能が衰えると、男性ホルモンは減少します。
男性ホルモンには脳に直接働きかけて、意欲を高めたり判断力や記憶力を高めたりする機能があります。男性ホルモンの減少により、憂うつ感や、集中力やアグレッシブさの欠如、判断力や記憶力の低下が引き起こされます。