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「やる気が出ない」が危険信号? 中高年に不調を起こす脳の変化

和田秀樹(精神科医)

2022年08月15日 公開

 

中高年は、まず「うつ」を疑ってみる

「中高年」と呼ばれる年代になって「どうも最近やる気が出ない」「活動的でなくなった」「頭の働きが悪くなった」...と感じたら、まずは「うつ」を疑ってみる必要があります。

とりわけ、中高年がうつになりやすくなるのは、脳内伝達物質のひとつである「セロトニン」の不足が大きな要因といわれています。

うつ症状が起こるのは、神経細胞間や筋線維間に形成される「シナプス」という接合部での神経伝達物質の受け渡しがうまくいかなくなることが原因のひとつと考えられています。

シナプスには隙間があり、その隙間にセロトニンが入り込むことで神経伝達が行われるのですが、シナプスの隙間でセロトニンを受け損なうと、セロトニンは放出元に吸収されてしまいます。

このような場合や、あるいはもともとセロトニンの放出量が少ないために神経伝達がうまくいかなくなると、気分が落ち込んで「うつ」になるのです。

「SSRI」という抗うつ剤(比較的副作用が少ないといわれてきましたが、最近副作用が話題になっています)では、セロトニンが放出元に吸収されるのを抑える働きがありますが、もともと放出されるセロトニンが少なければ効き目も薄くなります。うつの予防には、「セロトニン」を減少させないようにすることです。

 

「粗食系」より「肉食系」

セロトニンの減少を抑え、脳の老化を防ぐ方法はとても簡単。

それは、「肉を食べること」です。セロトニンの原材料はトリプトファンというアミノ酸なのですが、これは主に肉類に豊富に含まれているからです。野菜中心で、肉をやめて魚ばかりのメニューでは、トリプトファンを十分に摂ることは難しいのです。

そもそも「長生きしたいなら『肉食より粗食』」というのもとんだ間違いです。織田信長が「人間50年...」と言った時代から360年近く経った昭和20年頃まで、日本人の平均寿命はずっと50歳にも届きませんでした。

先進国では最短命国だったのです。そうして昭和22年にようやく50歳を超え、その後爆発的な勢いで平均寿命が延び、今や世界でもトップクラスの長寿国となった背景のひとつに、肉食の普及があるといわれています。

「健康になりたければ肉を控えよ」というのは、日本人の4倍以上もの肉を食べる欧米諸国人の話であって、もともと肉類の摂取量が少ない日本人には当てはまりません。好きな肉料理を我慢するなんて愚の骨頂です。

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