自ら「やる気をコントロールできる人」が成功する
2012年04月11日 公開 2024年12月16日 更新
常識のメガネを外せ
信号の「進め」の色を聞かれると、誰もが「青」と答えるでしょう。「青だから渡ろう」。そんな風に日常でも使っています。絵に描かれた信号も、文字通り青色で表現されていることがほとんどです。
しかし、実際の信号をよくよく見ると、間違いなく「緑色」です。アメリカやフランスでは、あの色を「緑」と表現しているくらいです。私たちはふだん言葉として「青」と言っているので、絵に描くときも、迷わず青色を使ってしまうのです。
では、虹は何色ありますか? これにも私たち日本人は「7色」と答えます。しかし、アメリカでは6色、シベリアでは2色、と答えるのだそうです。そもそも、正しい答えはありません。虹は色のグラデーションによって成っているために、日本人は便宜上、7色に区切っているにすぎません。そんな理由で、国によって色数が異なるわけです。
日本でも3、4歳の幼児に虹の絵を描かせると、その色の数は実に自由です。5色だったり、10色だったり、3色だったりと、思い思いに感じたまま、見たままを紙に落としていきます。それが小学生くらいになると、ほとんどの子どもが7色に塗り分けて描くのです。
3、4歳の幼児と、小学生の違いは何でしょうか。この間に、「虹は7色である」という日本の常識を学ぶからです。その常識が、私たちの目の機能にまで影響を与え、虹を見たときに7色に感じさせて、それに則って7色に描くようになるというわけです。
しかし、既に書いたように、「虹が7色」というのは日本での「常識」であって、「真実」ではありません。日本で「進め」の信号を「青」というのが、「常識」であって、「真実」ではないように。
このように人は常識に縛られて、異なる見方をしてみることを放棄していることが少なくありません。知らず知らずのうちに、何の疑問も持たずに、世の中がつくった前提、常識を受け入れているのです。
今、あなたが当たり前だと思っていること、またはモヤモヤしていること。それらは本当に真実でしょうか。目の前にある「事実」や「暗黙の了解」「前提」に疑いのメスを入れた瞬間、悩みから解放されたり、新しい解決策が見えてきたりするものです。
今では「歩きながら音楽を聴く」ということは、当たり前のことです。しかし、それは1970年代に発売されたソニーの「ウォークマン」によってもたらされた「革命」でした。それまでの常識は「音楽は部屋で聴くもの」だったのですから。もし、ソニーの人々がその常識を「本当にそうだろうか」と疑い、「部屋以外でも聴きたい1」と思わなかったら、「ウォークマン」が生まれることはなかったのです。
就職活動のリクルートスーツは黒か紺。多くの学生はそう信じて疑わないでしょう。しかし、1980年代後半のバブル時代は、リクルートスーツすらとても華やかだった、と言ったら信じられるでしょうか。当時、企業の人事採用担当をしていた私のもとには、紺のブレザーとカーキのチノパン、グレンチェックのスーツの男子学生、ベージュや薄いピンクのスーツを着た女子学生が多く訪れました。
今も経営者として採用活動に携わりますが、学生たちが全員、黒や紺の地味なスーツを着ていることに違和感を覚えざるを得ません。
別に黒や紺のスーツでなくてもいい。それは私だけでなく、多くの企業の人事担当者の本音だと思うのです。
リクルートスーツを着る本質は、「オフィシャルな場で」「自分より目上の人に会う」のにふさわしい服装であるということ。黒や紺は勝手につくり上げられた常識にすぎません。相手に失礼ではない服装、と考えれば、もっと自由度が上がるはずなのです。
何か、意味のない常識にとらわれてはいませんか?
本当にそうだろうか。
本質はなんだろうか。
そう考えるクセを付けること。それも大切な凝り固まった自分をほぐすストレッチなのです。
小笹芳央
(おざさ・よしひさ)
(株)リンクアンドモチベーション 代表
1961年、大阪府出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、(株)リクルート入社。
2000年、(株)リンクアンドモチベーションを設立、同社代表取締役社長就任。気鋭の企業変革コンサルタントとして注目を集め、モチベーションエンジニアリングという同社の基幹技術を確立させ、幅広い業界からその実効性が支持されている。経営者としても、創業から8年で同社を東証一部に上場させた手腕には定評があり、講演会やテレビ(フジテレビ「とくダネ!」、テレビ東京「ガイアの夜明け」「カンブリア宮殿」他)・ラジオ出演でも人気を博している。
主な著書に『モチベーション・リーダーシップ』『モチベーション・マネジメント』(以上、PHP研究所)『会社の品格』『自分は評価されていないと思ったら読む本』(以上、幻冬舎)共著に『社長と教授の「やる気!」特別講座』(かんき出版)など多数。