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不眠には“白い食べ物”...漢方に学ぶ「心身を整える食事」4つのポイント

櫻井大典(漢方家、国際中医相談員)

2022年10月20日 公開

 

こんな不調には何が効く? おすすめの食材と食べ方

櫻井大典 食養生
イラスト:いしかわみき

食養生は薬のように即効性があるものではないので、意識して普段からとり入れるようにしましょう。それが病気や不調の予防になります。季節ならではの不調には、旬の食材を選べば、まず間違いありません。

【呼吸器系】

空気が乾燥し始める秋には空咳や痰がからむなど、呼吸器系の不調が出やすくなります。これらの不調をやわらげるためには、肺を潤す作用がある梨がおすすめ。そのまま食べても効果がありますが、梨の芯をくりぬき、氷砂糖を詰つめて、40分ほど蒸す「蒸し梨」は体が温まるのでより効果的。

一方、水分代謝が悪い体質の人は、痰を伴う咳が出やすくなります。この場合は去痰作用があるえのきや海藻類のあおさ、こんぶ、わかめなどが効果的です。

・体を潤す食材:梨、里いも、柿、ゆり根
・余分な水分を排出する食材:えのき、あおさ、こんぶ、わかめ

 

【冷え】

体を温める食材としては、ショウガ、羊肉などがおすすめ。とくに高齢者は温める力が低下しているので、積極的にとりましょう。ただし、体温は高すぎても低すぎてもNG。適量を守って体のバランスをとることが大切です。

 現在はスーパーなどで旬以外の食材も手に入るので、体を冷やす作用のある夏野菜を秋冬に食べる機会もあります。その場合は温かい食べ物を一緒にとるようにしましょう。たとえば、夏が旬のなすを食べる場合は、煮びたしにしてショウガやネギなどをたっぷりのせて食べましょう。

・体を温める食材:ショウガ、えび、シナモン、鹿肉、羊肉

 

【不眠】

中医学では、陰と陽のバランスがとれていると、よく眠れるとされています。年齢を重ねると、陽のほうにバランスが傾き、眠れなくなるのはごく自然なこと。睡眠時間が減っても、すっきり起きられれば問題ありません。

いつも寝つきが悪い人、すっきり起きられない人は、のどが渇く、肌が乾燥しやすいなど潤いが足りないタイプ。体内の潤いを増やし、体力の消耗を減らしましょう。辛いものは避け、潤いを補給するヨーグルト、豚肉、牛乳など白い食材がおすすめです。

・眠りをサポートする食材:ヨーグルト、はちみつ、豚肉、ゆり根、白きくらげ、豆腐、牛乳

 

【老化】

老化は、腎が弱くなる「腎虚」によって起こります。過労、足腰を冷やす、睡眠不足などの生活習慣が腎を弱めます。腎を補う食材としては、くるみ、松の実、栗、黒豆などの豆類がおすすめです。腎によいとされる黒い食材であるひじき、きくらげなどもいいでしょう。

腎は袋のイメージで生命エネルギーを包むものとされます。袋がかたくならないように、ゆるめることが大切。考えすぎずに五感を働かせて歩いたり、自然とふれあったりすることが腎を守ります。

・腎を補う食材:くるみ、松の実、栗、黒豆、ひじき、きくらげ

 

【肌の乾燥】

空気が乾燥すると肌も乾燥する人が多くなります。体を潤す食材として、にんじんやブロッコリーなどの緑黄色野菜や、しめじなどのきのこ類がいいでしょう。

たんぱく質をしっかり摂取することも肌の健康には大切です。豚肉や卵、カキは潤い補給剤になります。胃腸の機能が低下しているときは、植物性のもの、大豆食品などでたんぱく質をとってください。お魚を煮て食べるのもいいでしょう。

・肌を潤す食材:にんじん、ブロッコリー、しめじ、まいたけ、きくらげ、エリンギ
・肌を健康にする食材:豚肉、卵、カキ

 

【血行不良】

血液は体中の細胞に酸素と栄養を届ける役割があります。この大切な役割を担っている血液が汚れたり、粘度が高まって流れにくくなったりした状態を中医学では「瘀血」と呼び、万病の元とされます。健康維持には、血液が滞らず流れていることが大切です。

血流改善には、あずき、小松菜、納豆などがおすすめです。動脈硬化は加齢によって誰にでも起こりうるので、これらの食材は日常的にとりましょう。

・血流を改善する食材:あずき、黒豆、小松菜、にら、たまねぎ、納豆、青魚

 

【風邪・インフルエンザ】

風邪には「青い風邪」と「赤い風邪」があります。青い風邪は冷えからくる風邪で、悪寒やサラサラの鼻水が特徴です。発汗効果がある唐辛子やショウガ、シナモンなどがいいでしょう。

一方、赤い風邪は熱からくる風邪で、発熱や粘度のある鼻水、のどの痛みなどが起こります。熱を冷ます作用のあるミントやバナナ、りんご、大根などがおすすめです。

肉などの栄養価が高いものは胃腸に負担をかけてエネルギーを消耗するので逆効果。むしろ風邪のときは、邪気と闘たたかうエネルギーを蓄えることが大切なので、消化のよいおかゆがいちばんです。

・熱を下げる効果がある食材:ミント、バナナ、りんご、大根
・熱を上げる効果がある食材:唐辛子、ショウガ、シナモン

 

たまにならジャンクフードもOK

ハンバーガー、ピザ、アイスクリーム、菓子パン、スナック菓子など、市販のジャンクフードはたまに食べるとおいしいですよね。実は私も大好きです。

ただし、ジャンクフードは栄養バランスが悪いだけでなく、添加物が含まれる、糖質が高い、塩分が多いなど、健康を損なうリスクがある食品です。

けっして毎日食べたり、大量に食べたりしないでください。食べるときは、"心の養生"のために「体に悪い」なんて考えないことです。最高に楽しんで食べましょう。

 

【櫻井大典(さくらい・だいすけ)】漢方家、国際中医相談員。漢方薬局の三代目。日本中医薬研究会所属。ツイッターで発信される実践しやすい養生法が人気で、フォロワー数は16万人超。『つぶやき養生』(幻冬舎)、『病気にならない食う寝る養生』(学研プラス)など著書多数。

 

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