「人を殺すのは人であって銃ではない」 アメリカで銃規制が進まない4つの理由
2020年02月27日 公開 2022年01月26日 更新
銃をめぐる都市と農村の対立
銃規制が進まない二つ目の理由として、都市と農村の対立の問題がある。
アメリカでは都市部では銃規制推進派が多く、農村部では銃規制反対派が多い。
その結果、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市から選出された連邦議会議員は銃規制推進の立場をとるが、農村地帯が選挙区となっている議員は銃規制反対の立場に立つ。そしてアメリカ国内全体を見れば農村地帯の方が圧倒的に広いのである。
では、なぜ都市部では銃規制推進派が多く、農村地帯では銃規制反対派が多いのかといえば、面積と人口密度の問題がある。
アメリカの都市部は日本の都市部と同様、人口密度が高い。都市部で犯罪が起これば日本の110番にあたる911番への通報で比較的早く警察がやってきてくれる。
だが、アメリカの農村地帯では、隣家に行くのに車で20分以上かかることも珍しくない。そのような場所で怪しい人物を見かけたり、犯罪が起こったりした場合に911番通報をしても、警察が現場に来るのに時間がかかるため、ほとんど意味をなさない。農村地帯の人々が、危険な人間に対抗するための自衛手段がなければ自分の命と財産が危ないと考えるのは自然なことなのである。
都市部では何かあったら警察に頼ればよいと考える人が多いため銃規制推進派が多く、農村地帯では銃がなくては安全を守れないため銃規制反対派が多数を占める。
このような背景のもと、銃規制推進派と反対派の間で様々な議論がなされるが、統計的に見ると、銃規制推進派にとって都合の悪いデータの読み方ができる。
というのは、統計上、人口当たりの銃の数が多い地域ほど、銃による犠牲者が少ないという関係性が見て取れるからである。銃による犠牲者が多い地域は、銃乱射事件が起こりやすい学校など人の多い場所、つまり都市部に多い。
だが、都市部は先ほど述べたように、人口当たりの銃所持率は低い。他方、アメリカで人口当たりの銃所持率が高い地域は、自衛のため、あるいは野生の獣を狩るために銃を所持している人が多い農村地帯である。そしてアメリカの農村地帯は治安が良好であることが多い。
このような事情によって、統計上は、人口当たりの銃の数が多いところほど犯罪が少ないことになる。
この統計を根拠に、銃を持つ地域では人は他者に暴力を振るわず、礼節を守るようになる、などと主唱する人も登場する。そして銃乱射事件が起こった場合に、銃規制を強化するのではなく、むしろ緩和して多くの人が銃を持てるようにすれば治安がよくなるとの議論が湧き起こる。農村地帯に住んでいる人たちは、自分の身を守るために、多くの人に銃を持たせるべきだと主張するのである。