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社会

「人を殺すのは人であって銃ではない」 アメリカで銃規制が進まない4つの理由

西山隆行(成蹊大学法学部教授)

2020年02月27日 公開 2022年01月26日 更新

 

銃規制推進派

銃規制が進まない理由に、銃規制推進派が相対的に弱いこともある。

推進派には銃犯罪の被害者も多く、彼らは都市部の貧困層が多いため、銃規制推進のための時間や資金を提供する余裕がなく、組織力もない。

そうなると推進派は大金持ちの人に頼らざるを得ない。現在ブルームバーグ社のCEOで前ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグが銃規制推進派として莫大な私財を投入している。

驚くべきことに、2018年の連邦議会選挙では、NRAが集めた資金よりも、ブルームバーグが個人で銃規制推進派候補に献金した金額の方が大きかった。

ブルームバーグは2020年選挙で民主党の大統領候補となるべく出馬表明をしている。また、大統領選挙のみならず連邦議会選挙にも多額の資金を投じると宣言している。そのため、2020年選挙で銃規制推進派が影響力を増大させることも考えられるだろう。

だが、銃規制推進派はいかんせん個人の資金力に依存しすぎている。また選挙は資金のみで動くわけではなく、選挙時に人々を動員する組織力も必要である。

2020年の大統領選挙において銃規制賛成派と反対派をめぐって大きな動きが展開していく可能性もあるが、推進派が政治的影響力をどこまで持ち得るかは不明である。

以上のように、銃規制はアメリカ国内でも重要な意味を持ち、アメリカの自由と暴力の問題を象徴的に示しているのである。

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