衣服部門がきっかけ? 「無印良品のレトルトカレー」人気の裏側
2022年10月13日 公開 2022年10月19日 更新
常に改良していく姿勢...バターチキンの苦闘
その後、無印良品ではカレーのバリエーションを増やすだけでなく、一度販売した商品をより現地の味に近づけるためのたゆまぬ改良も行ってきました。
例えばカレーリーフというスパイスは現地では生のものを使っているのですが、日本で手に入れることが難しかったため、2014年頃から日本で栽培を開始し、生のものを瞬間冷凍することで風味を変えずに使うことができるようになりました。
またバターチキンはグリーンカレーの発売から7年後の2009年に発売された商品ですが、発売後も現地の味に近づけるため実に4回ものリニューアルを行っています。
1回目のリニューアルではスパイスの使い方を改良しましたが、それでも現地の味を再現できていませんでした。その理由を探っていったところ、日本では当時なかなか手に入らなかったカスリメティというスパイスを使っていないからだと分かり、このスパイスを苦労の上、入手して2回目のリニューアルを行いました。
3回目のリニューアルでは、無塩発酵バターを煮詰めて、水分やタンパク質、糖分などを取り除いた高純度のオイルであるギーを使うことでさらなる美味しさを目指し、4回目のリニューアルではトマトの酸味にこだわりました。これらの改良の結果、バターチキンは2022年のレトルトカレー人気投票でもダントツの1位を誇る品となっています。
様々なバリエーションとおすすめの一品
カレーはインド発祥の料理だそうですが、インド国内でも地域によって具材やスパイスの使い方が異なり、その味は全く異なります。またアジア各国に伝わった際、独自の発展を見せて、地域の食文化を代表するソウルフードへと進化しています。
現地の家庭の味にこだわってきた無印良品のカレーは、様々な地域のカレーを再現してきました。現在、無印良品では54種類のカレーを販売していますが、そのうち北インドのものが9種類、南インドが5種類、東インドが1種類、タイが5種類、マレーシアが3種類となっています。そして独自のカレー文化を誇る日本発祥のものも13種類発売しています。
なお日本のカレーにおいても、家庭の味の再現を追求する姿勢に変わりはありません。例えば「おうちのこだわりビーフカレー」という商品の開発にあたっては、家庭でカレーを作る際、どのような隠し味を入れているかについてアンケートをとり、その結果をもとに赤みそ、ピーナッツバター、ココアを隠し味として混ぜ込んでいます。
このほかにも無印良品が新たに創作した、辛くないカレーシリーズや糖質オフシリーズ、さらにはジビエカレーなどもラインアップされています。基本的には全種類のカレーを全店で販売していますので、ぜひ皆様も試していただければと思います。
最後に、こんなに種類があったら選べない!という方のために担当者のおすすめをいくつかご紹介したいと思います。
本格的なインドカレーが好きな方におすすめなのが、南インドの海老のココナッツカレーである「プラウンモイリ―」です。海老とココナッツのカレーとしては「プラウンマサラ」の方が有名かもしれませんが、プラウンモイリーはレモンの酸味とマスタードシードの香ばしい風味が特徴となっています。
一方、日本の伝統的なカレーが好きな方は「フォン・ド・ヴォ―のスパイシービーフカレー」がおすすめです。また社員に人気なのは「ごろり牛肉のスパイシーカレー」です。
【著者紹介】長田英知(ながた・ひでとも)
東京大学法学部卒業。地方議員を経て、IBMビジネスコンサルティングサービス、PwC等で政府・自治体向けコンサルティングに従事。2016年、Airbnb Japanに入社。日本におけるホームシェア事業の立上げを担う。2022年4月、良品計画に入社。同年9月よりソーシャルグッド事業部担当執行役員に就任。社外役職として、グッドデザイン賞審査委員(2018~2021)、京都芸術大学客員教授(2019~)等。著書に『たいていのことは100日あれば、うまくいく』(PHP研究所)、『ワ―ケーションの教科書 創造性と生産性を最大化する「新しい働き方」』(KADOKAWA)などがある。