人を見極める“4つ”の階層と要素
世界最先端のトップファームで磨かれた著者の秘伝の知恵として、本書の象徴的なところが人を見るためのフレームワークです。地上1階地下3階の逆三角形のピラミッドを紹介します。
履歴書・職務経歴書や面談等で一番わかりやすいのが、1階部分になっている、「経験・知識・スキル」です。質問をすれば答えてくれやすいものなので、誰でも見極められるものとも言えます。
ただ、この階層の見極めだけで人を判断しても結局はうまくいきません。経験・知識・スキルと成果の間には断絶があるのです。
地下1階部分は「コンピテンシー」です。人材業界等でよく使われる言葉で、「好業績者の行動特性」を表します。経営学者のピーター・ドラッカーが書籍で、「成果を出すのは習慣だ」と表現したことがありますが、どんなシチュエーションで、どういうアクションを取りがちか、という固有のパターンを示します。特に「成果志向」「戦略志向」「変革志向」の3つが重要なコンピテンシーだと言われます。
地下2階は「ポテンシャル」です。これはいわゆる人の器や伸びしろを示しています。この階から下は見極めるのがより難しくなってきます。要素としては、「好奇心」「洞察力」「共鳴力」「胆力」の4つだと本書では記されています。
新しいことに興味を持ち、地頭が良く、人を引っ張っていくことができて、粘り強い人であれば、将来伸びそうなことは納得感があるのではないでしょうか。
地下3階は「ソース・オブ・エナジー」となります。その人の頑張りを生む源です。「使命感」と「劣等感」のそれぞれが重要だといいます。表の面の使命感だけでなく、裏の面の劣等感がその人をドライブするのです。どちらが善でどちらが悪でもなく、それぞれ補いあっているところが特徴です。
EVILな人を避ける方法
相手を見極める方法が気になる人は多いでしょう。詳しくは本書をぜひ参照ください。大まかに言うと、まずはリラックスした空間を作り、その人の生の声が聴けるように工夫をします。コーヒーを入れてあげることや、アイスブレイクの雑談をするのが良いそうです。
そして、やはり面談での質問が重要となります。例えば、「あなたはチームプレイができますか?」という質問ではチームプレイが望まれている職種だという意図も明白なので、相手が事前に予想した質疑の範囲内にとどまってしまいます。
大事なのはエピソードを引き出すことです。それによりその人が大切にしている価値観を知る参考になるでしょう。そして、五感全てを総動員して、相手の言動に注目することが良いそうです。
表面上優秀でありながらもEVILな人を避けるのは一筋縄ではいきません。とはいえ、相手にどんな傾向があるかを知れば、未然にトラブルを防げる可能性が高まります。
EVILな人には、威圧的に相手をコントロールしようとする「マウント型」と、自意識過剰で自分の欲求を満たすために周りを巻き込む「ナルシスト型」がいると著者は言います。
相手が優秀であればその特性を隠そうとするので、想定外の質問をすることや、秘書、受付、レストランのウエイター、一緒に働いた人、などからインプットする、などの方法で多少は補うことができるといいます。
一緒に食事をして、少しの期間をともに働いてみることもいいかもしれません。相手がEVILという特性を持っているかもしれないと想定することが、人を選ぶ卓越者への第一歩になりそうです。
謙虚さと努力が「人を見る目」を養う
重要なことが目白押しの本書の中でも、どんなに道を究めたと思っても、100%の確率で人を見抜くことはできない、という謙虚さを持つべきだという話が印象に残ります。
人が人を見極めるという行い自体に精度の限界があります。さらに、相手の状況やこちらの状況も常に変わり続けるため、今最適なパートナーであったとしても、少し時間が経てばそうではなくなってしまうことが十分起こりえます。
よくビジネスの世界には正解がない、と言われます。私はその中で最も正解がわかりにくい領域が人を選ぶところと、組織全体の文化を築く行為のように感じています。
不確実なものを取り扱っている、という認識を持つと、おのずと自らの不完全さを認識せざるを得ないはずです。全くの自己流で試行錯誤して人を見る目を養うには、人生は短すぎるのです。
ここで取り上げたことはごく一部です。本書を読み通せば、これからの未来を切り開くより強固な武器になるでしょう。その土台の上で、人生の中で人を選ぶことを繰り返していくことを通じて、自分ならではのより上手い方法に巡り合えるのではないでしょうか。